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【質問】脚に激痛 歩行に違和感

40代の女性です。階段の上り始めに突然、左足の太ももからふくらはぎにかけて内側に激痛が走り、歩行に違和感を覚えました。整形外科を受診したところ「臼蓋(きゅうがい)形成不全」と診断されました。手術を受けた方がいいのでしょうか。

 

 

【答え】手術を考えてみては

徳島市民病院整形外科 中野俊次


臼蓋形成不全




 股関節は大腿骨頭という球状の骨と臼蓋(寛骨臼)というお椀(わん)状の骨盤の骨からなり、臼蓋が屋根のように大腿骨頭を覆って体重を支えています<図参照>。

 臼蓋形成不全は、屋根が低形成で大腿骨頭を十分覆っていない形態的な問題がある疾患です。立ったり歩いたりする日常の動作時、小さな屋根だと大腿骨頭の安定性が悪く、炎症や痛みが生じやすくなります。

 また、小さい屋根で荷重(体重負荷)を受けなければならないので軟骨が傷みやすく、進行すると変形性変化、すなわち骨に穴が空いたり(骨のう包)、余剰な骨(骨(こつ)棘(きょく))が形成されたり、さらに進行すると大腿骨頭が外側上方にずれたりします。臼蓋形成不全は女性に多く、変形性股関節症になる原因の80%以上を占めるといわれています。

 臼蓋形成不全の股関節は経年的に病期が進行します。▽軟骨が傷んでいない前股関節症期▽軟骨が傷み始め、関節の隙間が少し狭くなり始める初期▽軟骨が薄くなり、骨のう包や骨棘が形成される進行期▽軟骨が広範囲に消失して隙間が消失し外側上方にずれてくる末期-です。

 病期の進行とともにさまざまな症状が出現します。初期では、股関節周囲の違和感・脱力感や労働・スポーツ後の軽度の痛みが出現し、病期が進むに従い、動作の開始時や歩行時に痛みが出てきます。進行期、末期では歩行時のみならず安静時に痛みが出て睡眠に支障を来すことや、脚の長さが短くなり、跛(は)行(こう)(体が揺れる歩行)を呈する場合があります。

 股関節の症状は病初期では出現しにくく、症状が出現したときは既に病期が進んでいることがあります。股関節の痛みは早く助けてほしいという無言のサインかもしれません。

 当院で主に施行している寛骨臼移動術(寛骨臼回転骨切り術)という骨盤骨切り術について説明します。寛骨臼を球状にくり抜き、外前方に引き出すことにより正常に近い股関節を形成し、大腿骨頭の被覆を改善し股関節の安定性を獲得する方法です。

 手術の年齢の上限は60歳ぐらいまでですが、50歳以下が良いです。前股関節症期と初期が最も良く、進行期や末期は成績が低下します。手術時間は2~3時間で、術後2~3日で荷重をかけずに歩行練習を開始します。

 部分的に荷重をかけ始めるのは術後3週間経過後、全荷重は筋力の回復や骨癒合に応じて異なりますが約3~6カ月が目安です。寛骨臼移動術は人工股関節置換術よりも長い治療期間を要しますが、自分の骨、軟骨で正常に近い股関節を作り、前股関節症期、初期に骨切り術を受ければ、90%以上が人工股関節置換術を回避できる魅力的な手術方法です。

 歩行時の違和感や繰り返し痛みが生じていること、40代という年齢から、手術を考慮しても良いと考えます。通常の生活への復帰に関しては、当院においては入院期間が約2カ月で、筋力の回復と骨癒合の完成度に応じて、事務職であれば3カ月以降、重労働であれば6カ月以降としていますが、1年間は無理をしないように注意しています。

 手術以外の対処法としては、股関節にかかる荷重負荷を増やさないための体重コントロールが最も大切で、臼蓋形成不全の程度が軽い場合に限って筋力を鍛える水中運動も有益です。股関節が悪くなると、腰部や膝関節にも悪い影響を及ぼすことがあります。臼蓋形成不全の程度や症状に応じた治療を考える必要がありますので、主治医や専門医に相談していただくことをお勧めします。

徳島新聞2013年1月6日号より転載

 

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