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【質問】左耳がはっきり聞こえない

50代の男性です。突然めまいに襲われ吐き気のすることがあり、耳が聞こえにくくなりました。違和感の残る状態が続くので精密検査を受けたところ、突発性難聴と診断されました。1週間入院して現在も通院していますが、左耳がはっきり聞こえません。突発性難聴は原因不明の病気で、ステロイド剤の投与で治る場合があるものの、効果のない患者も多いということを知りました。このまま聴力を失ってしまうのでしょうか。



【答え】主治医と相談し治療継続を

県立中央病院耳鼻咽喉科 堀洋二

 突発性難聴は、突然起きる原因不明の内耳性難聴です。内耳のウイルス感染や循環障害が考えられていますが、いまだに原因は解明されておらず、厚生労働省が指定した130の特定疾患に含まれる難病の一つです。

 ほとんどが一側性で、再発することは極めてまれであるといわれています。国が行った疫学調査では、1987年に全国で1万6750人だった患者数は、2001年の調査では2倍以上の3万5千人に増加していました。

 人口1万人当たりでは2・7人。徳島県の人口が80万人とすると、年間220人が発症していることになります。また、発症の平均年齢もだんだん高齢化し、現在では50歳を超えています。ストレスの関与が強く示唆され、今後も増加すると予想されており、誰がいつかかってもおかしくない国民的な病気であるともいえます。

 原因不明のため、治療にはいろいろな方法が試みられていますが、厚生労働省研究班も有効な薬剤の特定には至っていません。通常は内耳の安静と、薬物療法としてステロイド、血管拡張剤、代謝改善剤、ビタミン剤が一般的に投与されます。

 また施設によっては、星状神経節ブロックや高圧酸素療法が行われることもあります。これらの治療は、できるだけ発症早期が望まれます。1993年の全国調査では、発症から2週間以内に治療が開始できた症例で、治癒率が43%、著明回復が20%、回復が18%、不変が18%でした。

 治らない症例を詳細に検討した結果では、その因子として<1>発症後2週間以上たってからの治療<2>発症時平均聴力レベルが90dB以上の高度難聴<3>回転性めまいを伴う症例<4>高齢者<5>糖尿病の合併-などが挙げられています。

 さてご質問の件ですが、入院の上ステロイドを投与されたとのことで、現状での最良の治療を受けたにもかかわらず、聴力改善に至らなかったのは本当に残念でなりません。

 本疾患は発症後1、2カ月で聴力が固定し、それ以降の聴力変化はないといわれています。つまり、難聴が回復せずに固定してしまった場合には改善が望めません。もし、さらに悪化するようでしたら、外リンパ瘻(ろう)やメニエール病、聴神経腫瘍などの別の原因も考慮する必要があると思われます。反対耳への影響や遺伝はないものと考えてください。

 また、難聴以外に耳鳴り、耳閉などの後遺症も残存していると推察されます。後遺症への対処も難しいのですが、少しでも軽減できるように主治医とよくご相談なさって治療を継続してください。

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