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睾丸に握り拳大の腸が出る

 【質問】農業を営む80代男性です。右睾丸(こうがん)に、腸と思われるものが握り拳大ほど出ています。左側にも少しあります。10年くらい前に医師から腸が長いと言われたことがあり、トラクターを運転中に強い振動があると下腹が痛みます。2年前には腸がさらに下がり、握り拳より大きくなりました。座ったり寝たりしている時は痛くありませんが、歩いていると太ももと擦れ合ってチクチクと痛みます。手術した方がいいのか、手術をするならどんな方法があり、術後に農作業できるまで回復するにはどのくらいの期間がかかるでしょうか。

 

 

 徳島赤十字病院外科 湯浅康弘 先生

 腹腔鏡手術 痛み少なく

 【答え】恥骨の左右の外側から太ももの付け根辺りをそけい部といいます。また、「ヘルニア」とは飛び出している状態を意味します。ご相談の男性の症状から最も考えられるのは、「そけいヘルニア」です。

 内臓がそけい部の腹壁の間から皮下に飛び出す病気で、「脱腸」とも呼ばれます。新生児から乳幼児に認められる場合と、年齢とともに徐々に発症する場合とがあります。前者は先天的に生じ、後者は加齢や腹圧によって筋肉および筋膜(筋肉表面の膜)が弱くなることが原因といわれています。

 初期症状として、立った時やおなかに力を入れた時、そけい部に軟らかい膨らみを感じますが、横になったり手で押さえたりすると、すぐに引っ込みます。放置すると膨らみが次第に大きくなり、不快感や痛みを伴ってきます。ごく軽度であれば経過観察するか、ベルトのような物で抑える方法もあります。

 突然膨らみが硬くなり、押さえても引っ込まなくなることがあります。これを嵌(かん)頓(とん)といいます。腸が嵌頓という状態になると、腸閉塞(へいそく)を起こし、嘔吐(おうと)や腹痛を伴います。腸の血の流れが悪くなって壊死(えし)すると、腸の切除を余儀なくされ、早急に対処しなければ命に関わります。厄介なことに嵌頓はいつ起こるか予想できません。

 そけいヘルニアは、症状が自然に快方に向かうことはまれです。嵌頓に注意して経過観察するのも選択肢ですが、完全に治すためには手術が必要です。程度はさまざまでも、そけい部の膨らみを自覚した際は医療機関の受診をお勧めします。

 一般的に、そけい部の膨らみ付近の皮膚を5センチ程度切開し、筋膜を修復する手術方法がとられています。多くの場合、腸が脱出した部分は筋膜に隙間ができて穴が開いたようになっており、正常な筋肉や筋膜を縫合して穴をふさぐ手術を行っていました。

 しかし、再発率がやや高く痛みが強いことから、現在ではさまざまな大きさや形状のメッシュ(シート状の人工物)を穴にあてがい、弱くなった筋膜を補強、修復する方法が一般的となっています。

 近年、同じようにメッシュを用いて修復する方法として腹腔鏡手術が普及してきています。左右の腹部とおへその計3カ所に開けた1センチ弱の穴から腹腔鏡を入れ、モニター画面を見ながら患部にメッシュを留置する手術方法です。正確な診断とメッシュの留置が可能で、従来の術式より痛みが少ないといったメリットがあります。

 ご相談の男性は右側だけでなく、左側にもそけいヘルニアの疑いがあるようです。腹腔鏡手術では穴を開ける傷を増やさずに反対側の観察や治療もできるので、よりメリットがあると思います。

 一般的に、メッシュを用いた手術であれば、手術当日から歩行でき、翌日から日常生活も可能といわれています。再発予防や痛みの軽減の観点から、術後約2週間は激しい運動を控えた方が安全ですので、農作業の再開には気を付けましょう。

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