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 牛乳で便通は改善しないか

 【質問】60代男性です。便秘症ですが、今までは牛乳を飲むとおなかが緩くなるため、冷たい牛乳をコップ1杯飲んで便を出すようにしていました。ところが、ここ数カ月は牛乳を飲んでも出なくなったため、ヨーグルトを食べたり、胃の働きを改善する薬を飲んだりしています。牛乳で排便を促せる体質に戻れないでしょうか。また、便を出す効果的な方法があれば教えてください。

  中井医院 中井陽 先生

 

 問診や検査で原因特定を

 【答え】牛乳を飲むとおなかが緩くなっていたのは、乳糖不耐症の可能性があります。乳糖不耐症とは、牛乳に含まれる乳糖を分解する酵素が足りないために分解吸収できず、乳糖が腸内に残る病気です。

 乳糖が腸内に残ると、浸透圧で水が染み出て下痢になります。乳糖は腸内細菌の餌になるため、悪玉菌が増加して腹痛やおなかの張りなどの症状も出ます。同様の症状は、胃腸炎や加齢などで起こる場合もあります。

 酵素が欠乏しているからといって、必ずしも症状が出るわけではありません。腸の調子が整っていたり、おなかを温かくしたりすることで乳糖の分解吸収を助けることもあります。

 質問者の方は、ヨーグルトや胃の働きを改善する薬を始めたことで胃腸の働きや腸内細菌のバランス(善玉菌の増加)が整い、おなかが緩くならなくなったと考えます。ご本人にとっては便が出なくなったと感じるようですが、むしろ腸の調子が良くなったと捉える方が良いでしょう。腸内環境を悪くすれば、元に戻る可能性もありますが、腸に負担をかけることになるのでお勧めしません。

 さて、問題となっている便秘の原因については、器質性と機能性に大きく分けられます。器質性は大腸がんなどの疾患により、腸内が狭くなって便が通りにくくなった状態です。機能性は便が詰まる原因はないものの、便を移動させる腸の機能が落ちた状態です。

 機能性には糖尿病、パーキンソン病、甲状腺ホルモン異常など全身の病気に伴う続発性と、原因となる病気のない特発性があります。特発性の中にも、腸の緊張が緩み運動機能が落ちた弛緩(しかん)性、腸が痙攣(けいれん)して便が通りにくくなった痙攣性、肛門直前の直腸に便があるのに便意を感じにくい直腸性があります。これらは加齢やストレス、生活習慣の乱れなどによる自律神経失調などが原因となります。その他に薬剤の副作用による薬剤性便秘もあります。

 最も効果的な治療は、診察(特に問診)に加えて血液検査や腹部レントゲン、コンピューター断層撮影(CT)などの各種検査を受け、原因を特定することです。しかし、ストレスなど原因がはっきりしなかったり、判明しても解決できなかったりするケース(例えば麻痺(まひ)があって動けないことが原因など)もあります。

 食事療法では、水分や食物繊維のほか、酸味、香辛料、適量の油やアルコールの摂取も効果があります。それでも改善されない場合は便秘薬を使用します。新しい薬も出ていますが、特効薬のようなものはなく、原因や便の性状に合ったものを選択する必要があります。

 原因や便秘のタイプを判断するためにも一度、検査を受けてみてはいかがでしょうか? 急に便秘になったり、悪化したりした場合は、大腸がんの可能性もあるため内視鏡検査をお勧めします。

 

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