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【質問】口とまぶたが閉じられず

夫が顔面神経麻痺(まひ)を患っています。顔半分の口が曲がって閉じられず、まぶたもうまく閉じることができない状態です。内科で処方してもらって服薬し、徐々に良くなっているように思いますが、以前と同じ状態にまで治る見通しは立っていません。ストレスや不摂生な生活が原因ではないかと思いますが、完治するまでにはどのくらいの期間が必要なのでしょうか。



【答え】後遺症の出現に注意を

中村耳鼻咽喉科クリニック 中村克彦

 顔面神経麻痺は、顔面神経が障害されることにより生じます。顔を動かす筋肉が麻痺し、目が閉じられない、うがいをすると口から水がこぼれる、といった症状を来します。

 まず、麻痺の原因を調べるためにいろいろな検査を行います。中枢疾患、すなわち脳に異常がないかどうか、外傷、腫瘍、中耳炎の有無などを確認するとともに耳の穴や耳介に水疱ができていないかを観察します。

 水疱を認めた場合はラムゼイ・ハント症候群と呼ばれ、帯状ヘルペスウイルスにより生じる顔面神経麻痺と診断されます。ラムゼイ・ハント症候群は、顔面神経麻痺の約2割を占めるとされ、難聴やめまいを合併することが多いので注意が必要です。

 明らかな原因が認められないときは特発性顔面神経麻痺、別名・ベル麻痺と診断されます。ベル麻痺は顔面神経麻痺の約6割を占める最も多い疾患ですが、近年は原因の究明が進み、ベル麻痺症例のかなりの部分で単純ヘルペスウイルスが原因となるということが分かってきました。

 帯状ヘルペス、単純ヘルペスウイルスは、ともに顔面神経の奥深くの神経節という部位に潜んでおり、ストレスや睡眠不足、過労などで免疫力が落ちたときにウイルスが再活性化し、麻痺を来すと考えられます。ご質問の通りストレスや不摂生が誘因となり、麻痺を来すと考えるのは理にかなっていると思います。

 ヘルペスウイルスによる顔面神経麻痺と診断がついた場合は、早期にステロイド薬と抗ウイルス薬を投与する治療が必要です。

 次に、麻痺が治るかどうか、完治までにどのくらい期間がかかるかを診断するためには、ENoGと呼ばれる予後診断法が必要になります。ENoGとは誘発筋電図法の一種で、神経障害の程度を数値で表すことが可能です。神経障害が軽度の場合には、1カ月以内に完治することが期待できますが、神経障害が高度な場合には1年たっても十分に回復しないことがあります。

 ここで注意しなければならないのは、たとえ麻痺が回復したとしても、顔が元通りにきちんと動くかどうかは別問題であるということです。神経障害が高度と診断された場合、例えば口を動かそうとすると目が勝手に閉じてしまったり、目を閉じようとすると口が勝手に動いてしまったりする、病的共同運動と呼ばれる後遺症の出現が少なくないのです。

 病的共同運動は高度な障害を来した神経が再生する段階で、本来つながっていた筋肉とは違う筋肉に間違って再生した場合に起こります。従って神経障害が高度と診断された場合には、単に麻痺の回復を目指すだけではなく、病的共同運動の出現を予防するような治療も必要となってきます。

 徳島大学病院耳鼻咽喉科には顔面神経外来が設置されており、ENoG検査を行うとともに、病的共同運動の出現を予防するためのミラーバイオフィードバックと呼ばれるリハビリテーションの指導が行われています。

 ミラーバイオフィードバックとは、鏡を見ながら目が閉じないようにゆっくりと口の運動を行うリハビリテーションです。繰り返し練習することで病的共同運動の発症を予防することが可能です。

 当院でもENoG検査やリハビリテーションの相談に応じることが可能ですので、いつでもご相談ください。

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