徳島県医師会 トップページへ

  • 文字サイズ標準
  • 文字サイズ拡大
文字サイズ変更について
県民の皆さまへ

【質問】 ものが二重に見える

 65歳の女性です。2年前から、片目では普通に見えるものが両目だと二重に見えるようになりました。顔を動かさないで、両目で正面、左右方向、上部を見ると二重になります。下方向は普通に見えます。当初に比べて症状は悪くなっています。裸眼視力は右0.15、左0.1。眼鏡使用時は右0.9、左0.7です。近視と乱視がありますが、目に痛みやかゆみはありません。何か病気なのでしょうか。治療すれば回復するのでしょうか。



【答え】 複視 -眼球運動検査行い治療-

徳島大学病院 眼科 四宮加容
複視

 人間は左右の目が同じ方向を向いています。見る方向が変わっても左右の目が同時に動くので、正面だけでなく上下左右どの方向を向いても視線がそろっているのが正常です。眼球は左右それぞれに、目を動かす筋肉(外眼筋)が6本ずつ付いています。それらがバランスよく働いて左右の視線をそろえています。この左右の視線のバランスが崩れると、ものが二重に見えます。ものが二重に見えることを複視と言います。

 <図>の例では、上を見る際に右眼は上を見ていますが、左眼が上を見ていません。左右の視線が上下にずれており、この場合、ものが縦にずれて見えます。左右方向を見てもずれて見えます。ご質問の方は、このような状態ではないでしょうか。

 複視の原因としては<1>目を動かす筋肉の異常<2>筋肉を動かす神経の異常<3>眼球周囲の異常-などが考えられます。

 <1>は、甲状腺眼症(甲状腺疾患に伴う眼球運動障害)、外眼筋炎(筋肉が炎症を起こして動きにくくなる)、重症筋無力症(神経からの指令が伝わりにくい)など、外眼筋がうまく作用してくれない病気です。それぞれ、内服や点滴、眼球周囲への注射などを行います。甲状腺眼症では放射線治療を行う場合もあります。

 <2>は、筋肉を動かす指令は脳から動眼神経、滑車神経、外転神経を通って伝わりますが、脳腫瘍や動脈瘤、外傷などでそれらの神経経路に障害が起こり、外眼筋の動きが悪くなるケースです。これらは命に関わることもあるので、急いで診断、治療を行う必要があります。糖尿病や加齢のため、わずかな神経障害が起こる場合もあります。こちらは数カ月単位で自然治癒する場合があります。

 <3>は、眼球が入っている眼窩(がんか)という目のくぼみに腫瘍ができたり、眼窩の骨が骨折したりして、目の動きが悪くなるものです。主に手術で治療します。

 眼科では、複視を訴える患者さんが受診されると、通常の眼科検査以外に眼球運動検査を行い、どの方向の障害か調べます。必要に応じ、採血や画像検査(CTやMRI)、内科や脳外科への紹介などを検討します。眼球運動障害の原因を調べて、それに応じた治療を行います。

 原因不明の場合や、原因治療を行っても複視が残った場合は、手術やプリズム眼鏡処方を行います。手術は、外眼筋の位置を付け替える手術です。大人は局所麻酔の日帰り手術で行うことが多いです。プリズム眼鏡は視線のずれを矯正するための眼鏡で、小角度のずれには有効です。

 ちなみに、片目で見ても二重に見える場合は単眼複視と言い、乱視や白内障などが原因で起こります。いずれにしても複視が出た際は早めに眼科を受診してください。

徳島新聞2012年7月22日号より転載
© TOKUSHIMA MEDICAL ASSOCIATION.