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【質問】 デポ剤の有効性は

 30代の女性です。統合失調症の再発予防策に関する徳島新聞の記事(4月8日付)を読みました。これまで日本では使用頻度が低かったものの、副作用の少ない第2世代抗精神病薬のデポ剤が最近承認され、徐々に広がり始めていると書かれていました。統合失調症の症状や、持効性注射製剤とも呼ばれているデポ剤の有効性について詳しく教えてください。



【答え】 統合失調症 -副作用減、自発性低下防ぐ-

冨田病院 冨田信昭(海部郡美波町西河内)

 統合失調症の症状についてのお尋ねですが、症状を説明する用語が日常の言葉とかなり違うための分かりにくさと、全く縁のないものという思いからの理解しづらさがあると思います。しかし、その症状はほとんどの人が体験しています。これは鬱(うつ)病についての世間の理解が進むにつれて、多くの人が自分にも似た体験があると感じたことと同じだと思われます。

 例えば妄想は「間違った考え」なので、われわれにもおなじみの体験です。しかし病気となると、家族や友人が善意でその間違った考えを何とか言葉で訂正してあげようとしても、かたくなに拒否し、関係の破綻に至ります。結果、家族・親友関係をはじめ、社会での居場所がなくなります。

 一番多い幻聴体験も、そばで「私には聴こえない」と何度言ってあげても、幻聴があまりにはっきり聴こえるため、幻聴と認識できません。「自分の考えが世間に広められている」「テレビで流れる」などの考想化された声についても同様です。これらは陽性症状と言われます。

 陰性症状は極度の無気力で終日何もせず、社会や自分の将来にも関心を持たずに過ごす状態となります。対人関係では淡々とした応対で会話にならず、感情的反応が鈍くなります。

 急性期・再発再燃期を除けば、活発な症状は1割程度で、残り9割は正常な状態が占めます。とは言っても、そのあまりに強い確信を現実世界に当てはめて葛藤関係となってしまい、親友や家族との別離や社会からの誤解、孤立へ陥ることもあります。

 いくら人間関係が狭まっても、自分の体験の確信が強すぎるために認識できません(病感・病識と言います)。これらの状態は病ですので、加療すれば必ず軽快・寛解します。

 1995年代までの第1世代(定型)抗精神病薬も、医師と患者さんとのアドヒアランス(互いに病気や医療方針を十分理解し合い、行動を共にする状態)が良く、服薬を続ければ7割は良くなります。

 この7割という値は、他の慢性疾患の改善率に全く劣りませんが、異なるのはアドヒアランスの成立に時間がかかること、加えて副作用を苦とした服薬中断があります。

 その結果、第2世代の抗精神病薬が登場しました。錐体(すいたい)外路症状(筋がこわばる・細かい手作業をしようとすると震える・イライラする)や、眠気、口渇などの副作用だけでなく、服薬回数も著明に減り、アドヒアランスが向上しました。

 また、退院1週間後に1割以上が服薬を中断する重度な患者さんには、2~4週に1回ペースの持続性第2世代注射ができました。「服薬のたびに病気が嫌になるので、注射に変えてほしい」と言う患者さんも増えました。

 今回は第2世代薬の詳しい説明は省略しますが、統合失調症発症の仮説の一つにドーパミン過剰説があります。第2世代はセロトニンという神経伝達物質の遮断と、ドーパミンの前頭葉への回路もある中脳辺縁系ドーパミン作動を利用し、自発性低下を防ぐ作用をするなどの工夫がされています。

 また薬の発展に加え、包括的地域生活プログラム(ACT(アクト))などが地域に文化的に定着することも再発予防の鍵になると思います。

徳島新聞2012年7月15日号より転載

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