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【質問】 手術してでも治したい

 40代の男性です。「局所性多汗症」で悩んでいます。手のひらと足の裏が同時に発汗し、次いで脇の下にも汗をかきます。手術してでも治したいのですが、どの科で受診すればよいのでしょうか。夏に向けて非常に不安を感じています。日常生活で気を付ける点があれば教えてください。



【答え】 手掌多汗症 -薬物内服や心身療法を-

徳島赤十字病院 麻酔科副部長 井関明生

 局所性多汗症は一般に、顔面や手のひら(手掌(しゅしょう))、脇の下(腋窩(えきか))、足の裏(足底)など体の一部から過剰に発汗する疾患で、そのほとんどは複数の部位で生じることが多いようです。主に、精神的興奮や感情的刺激が原因で発汗するため、残念ながら自然に治ることはありません。

 ご相談の「手掌多汗症」は、その中でも日常生活への影響が大きい疾患で、手のひらの上で汗が水玉になったり、垂れるほどになったりすると治療の対象となります。手掌多汗症のほとんどは原因不明で、遺伝性についてもはっきりとは分かっていません。

 男女比はほぼ同等で、日本での患者の割合は0.5~1%といわれています。以前はアジア系の人種に多いとされてきましたが、最近は欧米でも増えているとのことです。

 発症する年齢のピークは10~30代ごろで、思春期になって勉学や就業、対人関係に支障を来すという理由での受診が大半です。また、ご相談のように、ほとんどが同時に足底多汗症も伴っており、足の悪臭や水虫の発生のほか、腋窩多汗症や、中には顔が突然赤くなる赤面症の合併で悩まれている方もいます。

 後に記します治療法によってさまざまな診療科が関与しますが、通常は皮膚科や心療内科などを最初に受診し、手術療法が必要となってから呼吸器外科や麻酔科(ペインクリニック)を訪れるようです。

 治療法ですが、まず簡便なものとして、全身の分泌液を抑える抗コリン剤の内服が一般的です。ただし、症状の強い局所的な発汗に対しては効果がなく、増量により喉の渇きやおなかの張りといった副作用が現れます。

 外用薬としては、塩化アルミニウムを含んだ塗り薬がよく用いられますが、やはり効果は不十分であり、長期の使用による皮膚炎やアルミニウム中毒の可能性も指摘されています。不安を鎮めることで発汗量を減らす心身療法は最も自然で安全な方法ですが、効果がはっきりせず、まだ一般的な治療法としては確立されていません。

 海外ではそのほか、ボツリヌス毒素の局所注射がよく行われています。しかし日本での保険適応はなく、一部の美容形成外科で自由診療として行われているだけです。1回の効果の持続が数カ月程度と短く、費用の面から治療継続は難しいかもしれません。

 手術による交感神経の遮断(ETS)は、この中でも最も効果的な治療法とされています。これは背中から針を刺して薬液を注入するブロック治療よりも成功率が高く、15年ほど前から保険適応になっています。

 全身麻酔の下で脇の下に胸腔(きょうくう)鏡という内視鏡を挿入し、脊椎の横にある一部の交感神経を直接見ながら、切るか焼くことで破壊します。また、遮断する交感神経を変えることで腋窩多汗症にも有効です。

 手術自体は簡単で傷も目立たないため、一時、全国的に流行しました。しかし術後に必ず、腹部から下半身での発汗が増える代償性発汗が起こり、逆にこの症状で悩まれる方が現れたことから、現在は制限される傾向にあります。

 副作用としてはまた、味覚性発汗(刺激物の摂取での発汗)や、自律神経失調症状(だるさ、熱っぽさ、ふらつき)なども生じることがあります。さらに、一度行うと手術前の状態に戻せなくなるので、受ける際には副作用だけでなく、目的や必要性についての十分な検討が必要です。

 したがって、発汗の程度にもよりますが、強いストレスを避けて、規則正しい生活を送るよう努め、まずは薬物の内服や心身療法などを試みられてはいかがでしょうか。

徳島新聞2012年6月10日号より転載

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