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【質問】 80代の母、意味不明の話

 80代の母親のことについてですが、最近ぼうっとしていることが多く、意味不明のことを言うので病院に行ったところ、認知症と診断されました。治ることはないと思いますが、進行を遅らせる薬や、日常生活での工夫があれば教えてください。また、この病気は遺伝するのでしょうか。



【答え】 認知症 -孤独を避け脳への刺激を-

やまぐちメンタルクリニック 院長 山口浩資(徳島市寺島本町東3丁目)

 認知症の進行を遅らせる薬はあります。ぜひ、近くの医療機関で処方してもらいましょう。ただし、認知症の進行を遅らせる薬が神経細胞を刺激しすぎて、興奮状態になる場合もあります。夜間徘徊(はいかい)や怒りっぽくなるなどの問題行動が表れた場合は、早めにお医者さんに相談してください。

 次に、認知症となった方への対応の仕方や、日常生活の工夫について考えてみましょう。それにはまず、脳の仕組みについて理解する必要があります。

 そもそも脳は、刺激に反応するために進化してきました。暑い寒いを皮膚で感じ、ざらざらしている大地を足の裏で踏みしめ、危険な腐敗臭をかぎ、猛獣のうなり声を聞き、魅力的なミカンやリンゴの色を見て、刺激に反応するのが脳です。

 仮に、健康な人を暗い部屋に閉じ込めて、音も光も遮断してしまったら、脳はたちどころに刺激を受けられなくなり、幻覚妄想状態になったり、うつ状態になったりします。脳にとって刺激を受けられなくなることは、まさしく致命的なのです。

 元気だった高齢者が骨折で入院して、急激に認知症が進行する場合などからも、脳にとって刺激がいかに重要であるかが理解できると思います。

 そこで、80代の認知症の方の脳に、どうすれば刺激を与えられるかを工夫する必要があります。認知症がないとしても、80歳を超えると自分の子ども世代の会話にもついていけないし、ましてや孫世代とのコミュニケーションは難しいものです。

 大家族で暮らしていても、同居している家族がかまってくれないと感じて、孤独を訴える高齢者は珍しくありません。そして、孤独の中で「財布がない。盗まれた」と言い出して、家族に否定され、また孤独になることの繰り返しです。

 正しいか正しくないかは重要ではありません。高齢者の口から出る「意味不明の話」や妄想を否定する必要はないのです。高齢者の脳の中では、正しい理屈があり正しい主張なのですから、「泥棒が入ったに違いない」でいいのです。

 ただし、大騒ぎしてもしょうがないので、「泥棒はちゃんと警察の方に捕まえてもらうから大丈夫。みんなでご飯にしましょう」で切り抜けてください。

 自分が仲間であると認められていて、家族の一員であって、近所の人や友人と関わって初めて、脳に刺激が与えられます。

 ある親孝行な娘さんがおっしゃいました。「先生、間違っていることは間違っていると、きちんと言わないと、逆に親をばかにしていることになりませんか?」。大丈夫です。そのうち、認知症だったはずの親の方から言い出します。「あんたは子どものころから気が弱かったねえ。泥棒が入ったから警察を呼ぶ言うて、ほんな恥ずかしいことする子に育てた覚えはないよ」と。

 分かっているようでずれている。気づいてないようで見抜いている。まさしく、その場限りの一瞬に意味があります。

 最後に、認知症に関しては、親から子への遺伝といった心配はありません。しかし、われわれの持っている遺伝子が、年齢とともに滅びていくプログラムを持っていることも、遺伝子の特徴としては重要だと思います。

徳島新聞2012年4月8日号より転載

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