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【質問】 せきが薬で止まらない

 30代の男性です。発熱し、鼻水が出ていたので常備薬を飲んでいましたが、せきがどうしても止まらず、病院へ行くと「マイコプラズマ肺炎」と診断されました。治療期間は長くかかるのでしょうか。一度かかれば、かかることはないのでしょうか。



【答え】 マイコプラズマ肺炎 -抗生剤で治療、外出控えて-

かわの内科アレルギー科 院長 河野徹也(鳴門市撫養町立岩)

 年長児や若年成人が多くかかる肺炎として、マイコプラズマ肺炎があります。マイコプラズマ肺炎は、近くにいる人のせきやくしゃみなどで放出されたマイコプラズマ・ニューモニエという病原体を吸い込むことで感染し、感染後1~3週間の潜伏期をおいて発症します。

 秋から冬に、家族や幼稚園、学校、職場などでの集団生活で感染しやすいことと、頑固なせきが長引きやすいことが特徴です。以前は、オリンピックの開催年と一致して4年ごとに流行の周期があり、オリンピック病ともいわれました。しかし最近は、流行の周期が崩れ、毎年、地域的に小さな流行を繰り返すようになってきました。

 症状としては、発熱で発症し、たんのない乾いたせき(特に夜間に増悪する頑固なせき)が長く続くのが特徴的です。せきは1カ月以上続くこともあります。一般的な風邪と違って、喉の痛みや鼻水などはあまり多くありません。

 病初期には発熱するものの、成人は軽症で済むことが多く、自然治癒することもあります。その一方で、5~10歳の小児は重症化することがあります。また、頻度は高くないですが、呼吸器の症状以外にも▽発疹などの皮膚病変▽肝機能障害▽胸痛や不整脈、心筋炎などの心臓の症状▽髄膜炎や脳炎、ギラン・バレー症候群などの神経症状▽鼓膜炎-などがみられることがあり注意を要します。

 一般の血液検査では、軽度の炎症所見や肝機能障害などがみられます。マイコプラズマ抗体検査では、急性期に1回測定し、2~4週後に再度測定する検査(ペア血清)で抗体価(抗体の量)が4倍以上の上昇、あるいは、単独の採血でも抗体価が非常に高い値を示せば、陽性と診断します。聴診では肺炎を疑う音がしないことも多く、肺炎かどうかは胸部レントゲン検査で診断します。

 治療には、マクロライド系と呼ばれる種類の抗生剤が第1選択薬として使用されます。この抗生剤を10~14日間投与することにより、治癒までの期間短縮が期待できます。

 しかし最近は、マクロライド系抗生剤に対する耐性菌も増えてきており、最初のマクロライド系抗生剤では十分な効果が出ずに、テトラサイクリン系やニューキノロン系という別の抗生剤に変更しなければ治癒しない場合もあります。
 また、一度かかっても、再度かからないとはいえず、再発例は少なくありません。

 生活上の注意点としては、呼吸器症状が強く、感染の恐れがある時期は、登校、登園などの外出は控えるようにしてください。また、家庭内での感染にも注意が必要です。安静、保温などに留意して完全に軽快してから、日常生活に戻るようにしましょう。

 普段から手洗いとうがいをしっかりして、予防に努めるようにしてください。

徳島新聞2011年12月11日号より転載

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