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【質問】 10歳長男が血尿で入院

 10歳の長男のことで相談です。顔にむくみがあり、血尿が出たので、びっくりして病院に行ったところ、急性腎炎と診断されて入院することになりました。どのような病気で、何が原因なのでしょうか。治療方法や再発はあるかどうかも教えてください。



【答え】 急性腎炎 -安静が基本、食事制限も-

かなめ小児科内科クリニック 院長 岡田 要(吉野川市鴨島町牛島)

 急性腎炎とは、扁桃(へんとう)炎、咽頭(いんとう)炎、膿皮(のうひ)症(とびひ)など先行する感染症の後、1~2週間の潜伏期をおいて、血尿、浮腫(むくみ)、高血圧が急性に出現する腎臓病です。

 症状の経過から▽乏尿期=病初期で浮腫、高血圧、血尿、蛋白(たんぱく)尿が高度▽利尿期=浮腫が軽くなり、血圧が下がって蛋白尿が減る▽回復期=浮腫がなくなり、血圧が正常化して尿異常も改善する▽治癒期=蛋白尿は消失するが、血尿は残ることもある-に分けられます。

 病気の原因としては、A群β溶連菌感染によるものが80~90%を占めますが、他にも、肺炎球菌やブドウ球菌などの細菌、あるいは、水痘(すいとう)、麻疹などのウイルス、寄生虫など、種々の感染症によって発症することが知られています。

 症状のうち、血尿は必発であり、目で見て赤色~褐色と分かる肉眼的血尿から、顕微鏡でしか分からない軽度のものまで多彩です。相談のお子さんは、おそらく肉眼的血尿であったものと思われますが、急性腎炎の約3分の1の方に認められます。

 ただ注意すべき点は、肉眼的血尿は腎・尿路結石、腎・膀胱(ぼうこう)腫瘍などの泌尿器科的疾患でも生じることがありますので、念のために精査していただく方がよいと考えます。

 また、先行感染から数日以内に肉眼的血尿を認めた場合は、IgA腎症(慢性の経過をとり30%ぐらいが人工透析に陥る)の疑いがあるので、腎生検による確定診断が必要となることがあります。

 尿異常としては他に、蛋白尿がありますが、最重症のネフローゼ症候群を呈するのは小児では4%ぐらいです。高血圧は80%にみられ、まれに重症の高血圧となることがあります。浮腫は顔や上半身に強く現れるのが特徴です。

 また同時に、尿量が減る症状(乏尿)がみられます。激症の方は強い乏尿、あるいは尿が全く出なくなり(無尿)、腎臓の働きが悪化して尿毒症に陥ります。

 病初期に強い症状を認める場合は入院治療となります。乏尿期の1~2週間は絶対安静で、2~3カ月間は入院治療が望まれます。一般に、利尿期までは入院をする必要があります。

 乏尿期には、厳重な食塩制限と飲水制限に加え、摂取蛋白も制限されます。利尿期になると、食塩および蛋白摂取量の制限を緩めます。

 薬物療法としては、溶連菌感染が90%を占めることから、原則としてペニシリン系抗生物質を2週間ほど投与します。ペニシリンアレルギーの場合は、マクロライド系抗生剤など他の系統の抗生物質を使用します。浮腫が強い場合はループ利尿薬を、重度の高血圧には降圧剤を投与します。退院後も1年間は激しい運動を避けた方がよいと考えます。

 予後についてですが、蛋白尿は3カ月、血尿は6カ月ぐらいで消失します。最終的に、小児では90%が治癒しますが、10%未満の方は尿異常が長く続き、慢性的な経過をとります。

 また、いったん治癒した方が再発することは、ほとんどないと考えられています。もし再発と思われる場合は、IgA腎症、膜性増殖性糸球体腎炎など、他のタイプの腎炎の可能性がありますので、腎生検による確定診断をお勧めします。

徳島新聞2011年9月11日号より転載

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