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【質問】 娘が人間ドックで異常

 30代の娘が人間ドックで膣壁(ちつへき)のう胞と左腎盂(じんう)拡張と診断されました。これらはどんな病気で、どんな関係がありますか。生理の時は出血量が多く、おなかが痛いようです。妊娠の経験はありませんが、放置しておいていいのでしょうか。妊娠前に対処方法があれば教えてください。



【回答】 膣壁のう胞・腎盂拡張 -各専門科で検査・治療を-

徳島大学病院 産婦人科助教 西村正人

 人間ドックでいくつかの異常を指摘され、心配なことと察します。

 腟壁にのう胞を見た場合に考えられる病気として、良性、悪性を含めた腫瘍(しゅよう)性疾患もありますが、最もよく見るものは、バルトリン腺に感染などを繰り返し、分泌物が流れ出にくくなることです。

 バルトリン腺が拡張するバルトリン腺のう胞、そののう胞内に膿(うみ)がたまって痛みを生じてくるバルトリン腺膿瘍(のうよう)などが考えられます。のう胞ができている位置や大きさ、性状により、診断や必要な治療が変わりますので、産婦人科でのう胞の状態を確認する必要があると思います。

 腎盂とは、腎臓の中で作られた尿が集まっている部位のことです。腎臓で作られた尿は、尿管を通って膀胱(ぼうこう)へ流れます。腎盂が拡張している場合、尿が膀胱へ流れにくくなっていることが考えられます。

 生まれつき、膀胱に入る尿管の部位や尿管全体が細い場合、あるいは、後天的に尿管結石など別の病気が原因になっている場合などが考えられます。腎盂の拡張が大きい場合は、腎臓の機能が悪くなってくることがありますので、泌尿器科での検査をお勧めします。

 これら二つの病気の関係ですが、基本的には別々のものと思われます。ただ、腎臓、尿管、卵巣、子宮、腟の奥3分の1の部位は、もともとの起源が同じですので、先天性な疾患の場合には何らかの関連がある可能性があります。胎児のごく初期の発生の過程で、尿管が膀胱に入らずに腟壁に入った場合、その部位にのう胞を作る場合があることが報告されています。

 さて、生理痛があり出血が多い場合は、子宮筋腫や子宮内膜症の病気の可能性が考えられます。子宮筋腫は良性の疾患ですが、筋腫の位置や大きさにより、出てくる症状はさまざまです。子宮の内腔(ないくう)に筋腫が突出している場合は、生理の時の出血が多くなります。また、このような場合は着床の邪魔になり妊娠しにくくなります。

 子宮内膜症は子宮内膜の組織が本来あるべき子宮内膜以外の部位にできる病気ですが、子宮筋層内にできるものを子宮腺筋症と呼んでいます。この病気になると、生理痛や過多月経の原因となります。

 また、子宮内膜症は卵巣や腹膜などにできることも多く、子宮の周囲に癒着を起こして激しい痛みの原因となることがあります。子宮内膜症が腟壁や外陰部などにできる極めてまれなこともありますが、この場合には腟壁にのう胞性の病変を作る可能性も考えられます。しかし、これらの子宮の病気と腟壁のう胞や腎盂拡張とは、基本的には関連がないと考えていいでしょう。

 子宮筋腫や子宮内膜症は不妊症の原因となることが多いケースもありますし、腟壁のう胞の大きさや、できている部位などの状態によっては、分娩(ぶんべん)時に障害になる可能性もあります。また、妊娠中は、のう胞の検査や治療が難しくなる場合がありますので、妊娠前に産婦人科で診察を受けておくことをお勧めします。

徳島新聞2011年6月19日号より転載

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