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【質問】 エックス線に写りにくい

 80歳になる祖母のことで相談します。気管支炎の治療をしていますが、高齢者はエックス線に写らない肺炎があると、友人から聞きました。本当なら、どんな症状の肺炎なのでしょうか。また、どのような方法で調べてもらえるのでしょうか。肺炎の可能性がないか心配しています。



【回答】 高齢者の肺炎 -比較読影後 必要ならCTを-

古林内科院長 古林英香(鳴門市大麻町板東)

 高齢者にはエックス線に写らない肺炎が存在するかという質問ですが、エックス線写真に写らない肺炎は、基本的にはありません。しかし、エックス線写真に写りにくい肺炎、判別しにくい肺炎は存在しますので、そのことを説明します。

 気管支炎で治療中とのことですので、まず、気管支炎と肺炎の違いを述べておきます。気管は徐々に細い気管支へと分岐し、その終末に肺胞が存在します。気管支で炎症がとどまっているものを気管支炎、肺胞および肺胞周辺組織まで達したものを肺炎と呼びます。

 つまり、肺炎は気管支炎より深部まで原因菌(細菌、ウイルスなど)が達して病変を起こした状態であり、せきやたん、発熱もひどくなります。また、肺胞はガス交換(酸素を体内に取り入れ、不要な二酸化炭素を排出)する場ですので、呼吸困難を伴うことが多く、一般に気管支炎より重症になります。

 次に、エックス線に写りにくい肺炎とはどのような場合が考えられるかについて書いておきます。

 高齢者に特有なものとして▽撮影の際に立位保持や呼吸停止が十分にできない▽腰の屈曲が強く胸がエックス線フィルムに密着できず、撮影条件が悪い▽骨の変形や大動脈の石灰化が病変に重なってしまう▽これまでにかかった古い結核や胸膜炎の影響を受ける-があり、また高齢者に限らず▽肺炎の範囲が極めて小さい▽病変が心臓、横隔膜などと重なっている▽肺炎の陰影が薄く正常肺との境界が不明瞭(すりガラス様陰影、小粒状、網状陰影)-などがあります。

 このようにいろいろな原因が考えられますが、ご質問の方は80歳とご高齢ですので、今までに何度かエックス線写真を撮られていると思います。かかりつけの先生によく相談され、以前の写真と比較(比較読影)してもらうことが、最も重要かつ効果的だと思われます。

 以上に述べたような理由で、かかりつけの先生が判定が困難と考えられた場合や、エックス線写真に所見が乏しいのに呼吸器症状が続くなど、臨床症状とのかい離があると思われた場合には、CT(コンピューター断層)検査を勧めていただけると思います。

 CT検査は、肺を数ミリ間隔で輪切りにした写真を撮れるので詳細な画像が得られます。また、連続写真を画像処理することにより立体的に表示することもできるため、さらに微細な病変をとらえることが可能です。

徳島新聞2010年10月31日号より転載

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