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【質問】見えにくいが手術必要か

 50代の女性です。昨年、両目が見えにくくなり、白内障と診断されました。生活に支障はないのですが手術は必要ですか。また、一度治療すると再発することはありませんか。手術時に近眼も矯正できると聞きましたが、老眼も治すことはできますか。



【回答】 白内障 -放置すれば悪化、緑内障も-

こくふ眼科院長 山添健二(徳島市国府町)

 人の目はよくカメラに例えられますが、カメラのレンズに相当するのが水晶体です。水晶体は直径9ミリ、厚さ4ミリの凸型で、膜(嚢(のう))に包まれています。タンパク質と水分からなり、皮質と核に分かれています。このタンパク質が変性して濁るのが白内障です。水晶体が濁ると、光がうまく通らなかったり、光が乱反射したりして、網膜に鮮明な像が結べなくなって視力が低下します。

 白内障になる原因はさまざまですが、最も多いのは加齢で、これを加齢性白内障と呼びます。個人差はありますが、誰でも年を取るにつれ水晶体が濁ります。このほか、糖尿病、ステロイド内服、外傷、ぶどう膜炎、放射線暴露といった原因が挙げられます。

 混濁部位によって、皮質白内障、核白内障、嚢下白内障に分けられます。皮質白内障は、初期では比較的視力が保たれ、進行は遅いといわれています。嚢下白内障は、初期からかすみが強く、明るい所で見えにくくなるほか、夜間に運転しづらくなります。核白内障は、濁りが白から黄、茶、黒と変化し、水晶体の硬さ、大きさとも増します。

 手術の時期は、生活に支障を来したときといえますが、放置すると急性の緑内障になったり、皮質が液化して真っ白になる過熟白内障や、核が硬くなり超音波が使えない成熟白内障になったりして、手術が難しくなることがあります。

 また「白内障だけ」と安心している方がほとんどですが、初期の緑内障や、網膜の中心に出血や水がたまる加齢黄斑変性が隠れていることがよくあるので、定期検査が必要です。

 生活に支障がなければ、点眼を使用します。点眼は水晶体が濁るのを遅らせるもので、症状の改善や視力の回復はできません。ある程度進んだ白内障は、時期をみて手術をするのがよいと思います。

 白内障の手術は、眼球を切開して水晶体の前嚢を切り取り、核と皮質を超音波で砕いて取り出した後、残した後嚢の中に眼内レンズを挿入します。

 手術は安全になってきていますが、水晶体を支える糸が切れるチン小帯断裂、嚢が破れる破嚢、核が眼底に落ちる核落下、眼内に細菌や真菌(かび)が感染する術後眼内炎といった合併症もあります。中でも、2千人に1人が発症する術後眼内炎は重篤になる場合があるので、術後の定期的フォローが重要です。

 水晶体を摘出すれば再発はありませんが、手術後数カ月から数年で、まぶしくなったり目がかすんだりすることがあります。後発白内障といい、手術で残した水晶体の後嚢が濁るために起きます。後発白内障は手術の必要はなく、レーザーで簡単に濁りを取れます。

 また、眼内レンズの度数を選んで近視をある程度は軽くできますが、もともと水晶体は厚さを変えることでピントが合うので、人工の水晶体ではピント調節は不可能です。老眼は治せませんが、最近は遠近両用の多焦点眼内レンズがあるので、術前検査次第で選択は可能です。ただ、このレンズは手術代が実費です。生活スタイルに合わせて選択してください。

20100808白内障


徳島新聞2007年8月8日号より転載

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