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【質問】 せき・息切れ、悪化が心配

 67歳の男性です。昨年の夏、間質性肺炎と診断されました。治療薬はないと言われたのですが、階段を上がるだけでも、せきと息切れがし、悪化していくのではと不安です。薬や治療方法はないのでしょうか。日常生活で気を付けることがあれば教えてください。



【答え】 間質性肺炎 -鎮咳薬やステロイド有効-

三木内科院長 三木 聡(徳島市国府町)

 まず、間質性肺炎とはどういうものかを説明します。

 気管支が20回以上枝分かれした先にブドウの房状の小さな袋があり、それを肺胞と言います。間質性肺炎では、肺胞の壁(間質)が炎症により壊され、線維化が起こります。肺は、酸素を空気中から血液に取り込んで二酸化炭素を血液から空気中に出す、ガス交換という働きをしていますが、間質性肺炎では、その働きに障害が起こり、呼吸困難などの症状が出現します。

 一方、通常の肺炎は実質部分、つまり、肺胞の内表面や肺胞腔(ほうくう)(肺胞の空気の部分)が病変の場所です。

 間質性肺炎の原因は多種類あります。膠原(こうげん)病、薬剤、サルコイドーシス、過敏性肺臓炎、じん肺など多様ですが、原因不明のものを特発性間質性肺炎と言います。特発性間質性肺炎は病理組織(顕微鏡検査)から▽特発性肺線維症(IPF)▽非特異性間質性肺炎(NSIP)▽特発性気質化肺炎(COP)-など7種類に分類されています。

 ご質問の中で「間質性肺炎と診断されました」という部分ですが、間質性肺炎という病名は、たくさんの病気の集合としての病名であり、最終診断名ではありません。

 現在の病状を考えると、もし、昨年診断を受けた診療科が呼吸器専門でない場合は、呼吸器関係で最も権威のある学会である日本呼吸器学会の専門医の受診をお勧めします。インターネットでは、日本呼吸器学会のホームページに、徳島県内の専門医の一覧が出ています。

 ご質問の「治療薬がない」という部分ですが、例えば、膠原病が原因で起きる間質性肺炎であれば、膠原病のタイプにもよりますが、ステロイドや免疫抑制剤がかなり効きます。

 また、特発性間質性肺炎のCOPであれば、ほとんどの場合、ステロイドホルモンがよく効きます。当院でも特発性気質化肺炎の方がおられますが、ステロイド治療を実施し、現在はステロイドを中止していますが安定した状態です。

 IPFにおいて、ステロイドや免疫抑制薬の効果は不明でしたが、2008年12月に抗線維化剤ピルフェニドンという薬の販売が開始されました。この薬は、死亡や肺活量低下などの悪化を抑制したとのデータがあり、現在、その単独投与が治療の主流となっているそうです。

 せきが続くようであれば鎮咳(ちんがい)薬(せき止め)が有効と思われます。呼吸困難に対しては、在宅酸素療法という方法があります。家庭で、機械の作った酸素や酸素ボンベの酸素を吸入する治療法です。

 呼吸器疾患では、軽症でも、歩行などによる運動負荷で酸素濃度が基準以下となれば、在宅酸素療法の適応があります。ご質問の方も在宅酸素の適応の可能性はあります。なお、労作時の著明な血液中の酸素濃度低下は、間質性肺炎の特徴の一つです。

 日常生活では、禁煙は当然必要です。感染予防のため、日常のうがいや手洗いも有効です。インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチン(肺炎で最多の肺炎球菌に対するワクチン)も有効と思われます。

徳島新聞2010年6月13日号より転載

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