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【質問】 市販薬常用 問題ないか

 40代の女性です。生理前になると毎回激しい頭痛があります。以前、MRIなどで調べましたが、脳に異常はありませんでした。市販の非ピリン系頭痛薬では効果がないので、病院で処方された薬がなくなると、市販のピリン系経口薬を飲んでいます。ピリン系なら1日効果があるので、生理のたびに2~3回飲んでいます。ピリン系薬を常用しても問題はありませんか。



【答え】 ピリン系鎮痛薬 -安全性確認、副作用少なく-

しんくら女性クリニック院長 塩見ひろ美(徳島市新蔵町)

 質問者の知りたい点は「ピリン系薬を服用してもよいか」ですが、質問者の悩んでいる症状は月経前の頭痛で、月経前症候群(PMS)あるいは片頭痛と考えられるものです。この症状についても説明します。

 まず、市販のピリン系薬を月経のたびに2~3回服用しても問題ないかという点に関して、結論からいえば問題ないと考えます。なぜなら、いつも服用しているピリン系薬で十分な効果があるようですし、副作用もなく、服用回数もひと月に2~3回ですので、多い回数ではないからです。

 おそらく、ピリン系薬は危険で身体に悪いのではないかと思っていらっしゃるのかもしれません。

 ピリン系薬剤というのは俗称で、薬の構造がピラゾロン骨格を基本骨格とする解熱鎮痛薬のことです。1980年代に、ピリン系薬剤による顆粒(かりゅう)球(血液中の白血球の1タイプ)減少症、消化管出血、皮膚障害などの重篤な副作用が問題になったことから、当時の厚生省(現厚生労働省)が安全性の見直しを行い、現在、ピリン系薬は副作用の発現の少ないものだけが市販されています。

 ピリン系なので副作用が起こりやすいということはないと考えてください。また、ピリン系でも非ピリン系でも、アレルギーをはじめとする副作用が生じる可能性はあります。大事なことは、市販の鎮痛薬はピリン系でもピリン系以外でも、ご自分にあった薬剤を適正量服用することです。

 さて、頭痛で悩んでいる方は非常に多く、主に一般内科や脳神経外科を受診されているでしょう。しかし、質問者のように月経の前に繰り返し起こる頭痛では、産婦人科を受診されることも少なくありません。なぜなら、月経前緊張症、あるいはPMSと呼ばれる病態の一つとしてとらえられるからです。

 最近、PMSという言葉は、若い方を中心に一般にもかなり知られるようになったと思います。PMSは月経周期のうちの排卵後に次のようなさまざまな症状が自覚されます。身体的には、頭痛、腹部が張る感じ、むくみ、乳房の張る感じ、倦怠(けんたい)感など、精神的には、気持ちが落ち込む、いらいらする、集中力が低下する-などです。そして、次の月経がくるとこれらの症状は消失していきます。排卵後に卵巣から分泌される黄体ホルモンが原因になっていることは明らかになっていますが、病態のすべてが解明されているわけではありません。

 PMSの治療としては、避妊薬である低用量ピル、うつ病の治療薬である選択的セロトニン再吸収阻害薬(SSRI)、漢方療法などがあります。しかし、質問者のように月経前の頭痛のみの症状の場合は、慢性頭痛の一つのタイプ、片頭痛の一種ととらえて、トリプタン製剤や漢方薬の片頭痛の薬である呉茱萸湯(ごしゅゆとう)、あるいは漢方薬の桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)などで効果がある場合があります。鎮痛剤以外の薬が頭痛に効くこともあるわけです。

 なお慢性頭痛は、脳腫瘍(しゅよう)や脳血管障害が原因である可能性は高くないかもしれませんが、質問者のように、一度MRIやCTでこれらの疾患の有無を検査することは大切なことです。

徳島新聞2010年6月6日号より転載

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