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【質問】 就寝時、無呼吸になる夫

 30代の夫が、数年前から就寝時に無呼吸になることがあります。心配なので病院で診てもらうよう勧めているのですが、なかなか行こうとしません。病院ではどのような診断、治療をするのでしょうか。短期間で治すことはできますか。



【答え】 睡眠時無呼吸症候群 -短期間での治癒 難しく-

阿南共栄病院 川田育二

 「睡眠時無呼吸症候群」は、2003年2月に起こった新幹線の居眠り運転事故で有名になりました。1時間あたりの無呼吸・低呼吸指数(AHI)が5回以上で、かつ、次の<1>~<3>の症状のうち少なくとも一つを満たすものが睡眠時無呼吸症候群と診断されます。ただし、ほかの睡眠障害、疾患、薬物に由来する場合は除外されます。

 その症状とは、<1>意図しない居眠りや日中の眠気、起床時の爽快(そうかい)感の欠如、疲労感、不眠などの症状<2>あえぎや窒息感を伴った覚醒(かくせい)<3>大きないびきや睡眠中の呼吸の中断が家人に指摘されること-です。

 睡眠時無呼吸症候群は、中枢性と閉塞(へいそく)性の2つに大別されます。ここでは、大部分を占める閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)について説明いたします。

 まず、診断について説明します。患者は、いびき、無呼吸、日中の眠気を訴えて来院するケースが多く、ライフスタイルや睡眠衛生、合併疾患の把握を念頭におきながら問診し、場合によっては睡眠日誌をつけていただきます。

 次に、視診やファイバースコープによる閉塞部位の推定を行います。確定診断は、睡眠検査によりますが、終夜睡眠ポリグラフィー(PSG)と簡易型睡眠呼吸モニター(簡易PSG)があります。基本的には1泊入院していただき、PSGを使って睡眠脳波、眼球運動、筋電図、心電図、胸腹の呼吸運動、鼻または口の気流、経皮的動脈血酸素飽和度、体位、いびき音などをモニターします。

 一方の簡易PSG検査は、器械を持ち帰って家庭で検査することができます。しかし、睡眠の評価ができないことや、装着の条件によってデータにばらつきがあることなどの問題点があります。

 治療については、重症度、ライフスタイル、年齢、閉塞部位の状態などを考慮した上で決定します。大きく、外科的治療と保存的治療に分類されます。

 外科的治療では、のどちんこやその周囲の形成術、口蓋(こうがい)扁桃(へんとう)摘出術、鼻の通りをよくする鼻腔(びくう)形態改善手術などがあります。

 一方、保存的治療では、鼻マスク治療などの経鼻(けいび)持続陽圧呼吸療法、栄養指導によるダイエット、側臥(そくが)位による就寝、口腔(こうくう)内装具などがあります。

 いずれにしても、睡眠時無呼吸症候群は短期間で治すことは難しく、居眠り運転事故や仕事の能率低下など社会的影響も大きい上に、心筋梗塞(しんきんこうそく)や高血圧など循環器系に大きな影響を及ぼしたり、脳卒中の合併率も高かったりと、生命予後に深くかかわっています。

 一番の問題は、患者自身に「病気」という認識が薄いことです。就寝時のことですので、自分では分からないのです。いびきは危険信号です。面倒がらずに早く専門医を受診することをお勧めいたします。

徳島新聞2009年12月6日号より転載

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