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【質問】 3歳児 睡眠時に異常な行動

 3歳の女児についてです。小さいころから寝相が悪く、夜中に突然起き上がり、はいはいをしてまた寝るといった行動を繰り返します。寝言もひどく、起きているかのように大声でしゃべります。こういった状態は何かの病気なのでしょうか。



【答え】 睡眠随伴症-規則的な生活ポイント-

古川小児科内科医院 古川宣明(阿南市領家町)

 ご質問の行動様式は、いわゆる睡眠随伴症(睡眠時異常行動)と考えられます。

 ほかの情報がないので断定はできませんが、奇妙な行動が睡眠時のみに限られていて、年齢相応の精神運動発達、身体発育が確認されているのなら放っておいて良いと思います。▽睡眠時間を十分取る▽就寝前の水分を制限する▽排尿を励行する-など、当たり前の規則的な生活をさせることだけがポイントです。

 こうした睡眠随伴症は一般的には年齢が上がるにつれて自然にその症状が消失することが多いのですが、時には成人になるまで持ち越す場合もあります。年長児では「ドアを開けて外に出てしまう」といった症例もあり、その場合には外傷を防ぐ必要があります。

 そうした行動があまりに頻繁に見られる場合は、ベンゾジアゼパンなどの睡眠薬を短期間投与することもあります。しかし、可能ならば、規則的な睡眠を十分取ることで対処するのが望ましいと考えられています。

 また、ご質問のケースはその可能性はうかがえませんが、睡眠随伴症には夜驚(やきょう)症と同様の形で発症する前頭葉てんかんがあります。5~7歳がピークの夜驚症よりも発症時期が遅く、10歳以後に多いと言われています。鑑別には脳波検査が必要です。

 いずれにせよ、睡眠時のさまざまな行動に対する診断は、保護者の観察力にかかっています。▽異常行動の起きる時間帯▽具体的な症状や異常行動▽保護者の介護によって症状が改善するか▽寝床を離れて行動するか▽異常行動を後になって覚えているか▽昼間うたた寝をしているときにも起こるか▽覚せい時にも症状が出る場合があるか▽症状が現れたときに同じ行動を繰り返したり、または一定のリズムを持つ行動を取ったりしているか-などに注意して、子どもの様子を観察してください。

 こうした詳細な観察によって、睡眠随伴症はほぼ診断できます。それでもはっきりしない場合は、てんかんとの鑑別診断も含め、ビデオ付きポリグラフが有用です。

 蛇足ですが、筆者の大学時代の友人は、徹夜でマージャンをした後、仮眠中に大きな声で寝言を言い、むっくり起きて部屋の中をうろうろしてまた寝る、ということを繰り返していました。彼は今、京都で大きな病院の理事長をしていますが、特に問題を起こしたという話は聞いていません。

 というわけで、ご質問のお子さんもあまり神経質にならなくてもよいのではないでしょうか。

徳島新聞2009年4月19日号より転載

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