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【質問】 わきがのような嫌なにおい

 30歳の男性です。わきの下にすぐ汗をかくのですが、Tシャツを着てわきの下に汗をかくと、わきがのような嫌なにおいがします。においを抑える方法はありますか。わきがだとしたら、手術をした方がいいのでしょうか。



【答え】 腋臭症 -症状により異なる治療法-

徳島大学大学院ヘルスバイオ研究部 形成外科学分野助教 山野 雅弘

 「わきが」は、医学的に腋臭(えきしゅう)症と呼ばれ、腋窩(えきか)(わき)から独特の強いにおいを発する状態をいいます。わきの汗が原因だといわれています。 

 人間は2種類の汗を出す腺(汗腺)を持っています。一つは、暑いときや激しい運動をしたときに、体温を下げるために汗を出すエクリン汗腺です。全身にあり、皮膚に直接開口しています。

 もう一つは、においを伴う汗を出すアポクリン汗腺です。わき・陰部・へそ周辺などにあり、毛包に開口しています。アポクリン汗腺は精神的発汗(冷や汗など)を行うことが知られています。腋臭症のにおいの源は過剰に分泌されたアポクリン汗中の脂肪酸が、皮膚表面に存在する細菌によって分解されて生ずる低級脂肪酸とされています。

 わきがの特徴として▽わき毛の生え始める思春期に発現する▽極めて高率(90%以上)に、軟らかく湿った耳垢(じこう)を合併する▽高率に腋窩多汗症を合併する▽優性遺伝する-などが挙げられます。

 近年、マスメディアなどで体臭について取り上げられることが多くなり、体臭恐怖症に陥っている人も少なくありません。診断は、わきに2~10分間、ガーゼなどをはさんだ後に第三者(医師・看護師など)がにおいをかいで評価し、先に述べた特徴などと合わせて総合的に行います。

 軽症の場合、過剰な汗をこまめにふき取って清潔にし、制汗・デオドラント剤を使用するのがよいとされています。20%塩化アルミニウム液スプレーなどを自家調剤している施設もあり、有効とされています。このほか、腋窩多汗症が主な症状の場合は、ボツリヌス毒素の局所注射も効果があるとされています。アポクリン汗腺は毛包に開口しているので、毛包を破壊するレーザー脱毛などを行ってもにおいはやや軽減します。

 においが強く他人に不快感を与える場合や、着衣が過度に汚れる多汗がある場合は手術となります。アポクリン汗腺のある真皮深層から皮下組織をかきだしたり吸引したりするほか、破砕、交感神経切除など多数の方法が報告されていますが、汗腺層を切除する横切開剪除(おうせっかいせんじょ)法が一般的です。

 横切開剪除法はまず、局所麻酔注射を行ったあと、わきに5センチ程度の切れ目を1~2本入れて皮下脂肪の深さで皮膚をめくります。次にめくった皮膚裏面をはさみで薄く削り取るようにして、血管を残しながら汗腺を除去していきます。そのあと、皮膚を元に戻して縫合し、術後10~14日で抜糸します。

 手術の危険性として、汗腺を除去したすき間に血液がたまったり、めくった部分の皮膚血行が不良になって皮膚が壊死(えし)したりすることがあります。形成外科医が勤務している施設ではほとんどが保険適応で手術を行っています。施設や術者により、切開方法、術後安静度、入院適応などが若干異なるため、治療を受ける施設で詳しい説明を受けられた方がよいでしょう。

 ただし、いずれの方法を選択しても、においを100%取ることはできず、ある程度残ります。このことを十分知っていただいた上で、近くの皮膚科・形成外科を受診、相談してください。

徳島新聞2008年9月21日号より転載

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