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【質問】 衛生面など予防方法は

 7歳になる孫のことで相談します。女の子です。今まで何度となく、のどの痛みと高熱が出て、病院に行くと溶連菌といわれました。溶連菌とはどのような病気なのでしょうか。孫は2年ほどスイミングに通っていましたが、病気と関係はあるのでしょうか。衛生には気を付けていますが、どのように予防すればいいのでしょうか。抗生物質をよく飲むことになり、副作用も心配しています。



【答え】 溶連菌 -手洗いやうがい励行して-

古川病院 小児科 中川 礼子(徳島市寺島本町西)

 何度も溶連菌に感染して、心配されていることと思います。溶連菌は、正式にはA群β-溶血性連鎖球菌といいます。この細菌がのどへ感染すると「咽頭(いんとう)扁桃炎(へんとうえん)」を起こします。

 主な症状は、急激な発熱とのどの痛みです。扁桃腺に白く膿(うみ)が付着し、舌の表面が赤くブツブツになり(イチゴ舌と呼びます)、体や手足に小さな赤い発疹(ほっしん)が出て、かゆみを伴う場合もあります。ピークを過ぎれば手足の指先の皮がめくれることもあります。咳(せき)や鼻水は通常の風邪に比べると少ないようです。

 よく発症する年齢は2-10歳で、ピークは4-6歳です。のどが痛いと訴えて小児科に来院する子どもの約15%は溶連菌感染症といわれています。くしゃみや咳で飛び散った飛沫(ひまつ)に付着した溶連菌を吸い込むことで、人から人にうつります。感染して症状が出るまで2-5日ほどかかり、重篤な合併症としてリウマチ熱や急性腎炎があり注意が必要です。

 診断の際は、のどを綿棒でこすって菌を採取します。迅速診断キットを使えば数分で溶連菌かどうか分かりますが、抗生物質に対する感受性までは判断できません。細菌培養検査をすれば菌の詳しい性状が分かりますが、診断に数日かかります。どちらも検査前に抗生物質を飲んでいると、正確には診断できません。また補助的に血液検査を行うこともあります。

 溶連菌の治療は、抗生物質を内服します。薬を2~3日飲めば症状は治まりますが、短期間の内服では再発しやすいことが分かっています。合併症を予防し、溶連菌を確実に除菌するためには、10日間以上薬を飲むことが必要になります。

 医師の指示通り最後までしっかり飲むことが大切です。薬の副作用については特に心配ありません。治療を開始して24時間が経過し、症状が治まれば、登校しても構いません。感染予防は手洗いやうがい以外に特に有効なものはなく、スイミングとの関係もあまりないと思います。

 お孫さんは何度も感染しているとのことですが、反復感染はよくみられます。溶連菌にもいろいろなタイプがあり、異なった流行種にその都度かかっていることも考えられます。毎回きちんと治療を受ければ心配ありません。

 また、医師の指示通り薬をしっかり飲んでいるのに治りきらない場合は、処方された抗生物質が効かない耐性菌に感染している場合もありますので、お孫さんの咽頭の溶連菌を培養してもらい、その菌に合った薬に変更してもらうことをお勧めします。

 このほか、のどに溶連菌が定着しているのに症状がみられない「無症状保菌者」が、お孫さんの周辺にいる可能性もあります。家族内感染をよく起こす菌ですので、一度家族全員で検査・治療を受けられてはいかがでしょうか。

徳島新聞2008年6月8日号より転載

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