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【質問】 のど元に不快感 胸に激痛

 80代の女性です。血圧降下剤を服用しています。みぞおちからのど元にかけて突き上げるような不快感があり、夜中や明け方近くになると、胸に激痛が起こって、背中に突き抜ける痛みで汗ばみ、目が覚めます。去年、胃カメラによる検査で逆流性食道炎と診断されました。日常生活や食事、就寝時の姿勢などでアドバイスをお願いします。また最近、骨密度が低くなり、去年11月から週1回服用の骨粗鬆症(こつそそうしょう)治療薬を飲んでいますが、服用して胸痛の回数が増えました。関係はありますか。それと県内に食道炎の専門医はいますか。



【答え】 胃食道逆流症 -腹部圧迫する姿勢避けて-

西條内科 西條 義昭(鳴門市撫養町南浜)

 質問からすると、胃食道逆流症(広義の逆流性食道炎)のようですね。この病気は「胃の内容物が食道へ逆流することによって、胸やけ、酸っぱいものが上がってくるような症状、内視鏡的に粘膜障害があること」と定義されています。

 症状はあなたの訴えが典型的で、高齢者の増加や食生活の欧米化(脂肪摂取量の増加)などが原因で患者が増えています。治療薬は、プロトンポンプ阻害薬やH2受容体拮抗(きっこう)剤、消化管運動機能賦(ふ)活剤、漢方薬などを使用しますが、薬をやめると再発しやすく、症状が改善しても維持療法が必要です。

 同時に、日常生活の改善も重要です。以下に主な注意点を説明します。

 まず、前かがみの仕事など、おなかを圧迫したり力を入れたりする仕事を長時間続けないことが大切です。腰や背中が曲がった人、前かがみの人は特に気を付けてください。

 次に、腹部を圧迫する服装や、ベルト、ガードル、コルセット、帯などで腹を締めすぎないようにすることです。寝るときは上半身を少し起こすような姿勢で胃の内容物の逆流が起こりにくいようにし、食後2~3時間は横にならない(就寝前2~3時間は食事をしない)でください。

 さらに減量と腹八分に努めることが大切です。肥満や食べ過ぎは腹圧を高め、胃の内容物の逆流を起こしやすくします。便秘も腹圧を高めるので気を付けるようにしてください。

 そして胃液の分泌増加を促す脂肪の多い物や甘い物、酸っぱい物、刺激の強い物、香辛料、コーヒー、アルコール類などは避けてください。それ以外でも、タバコや食べて胸やけを起こした物は避けるようにしてください。

 ところで血圧降圧剤を服用しているとのことですが、降下剤の一つにカルシウム拮抗剤があります。この薬は血管だけではなく、下部食道括約筋も弛緩(しかん)させ、逆流性食道炎を悪化させる可能性が指摘されています。服用中の降圧剤の種類を確認してください。

 また、あなたが服用している骨粗鬆症治療薬と症状の悪化は関係があるかとの問いですが、答えは「関係あり」です。この薬は骨粗鬆症治療に大変効果がありますが、口腔(こうくう)から上部消化管粘膜にかけて強い刺激があるため、食道炎や胃炎の患者には慎重に投与することとなっています。逆流性食道炎がある人は特に注意が必要です。

 この薬の服薬には、次のような用法説明がなされています。「朝起床時に水180ミリリットルとともに経口投与する。なお、服用後少なくとも30分は横にならず、飲食(水を除く)ならびに他の薬剤の経口摂取も避けること」。もう一度、再確認して服用してください。

 最後に県内に食道炎の専門医がいるかとの質問ですが、食道炎のみの専門医はいませんが、消化器病専門医、消化器内視鏡専門医の先生はたくさんいます。専門医は大学、県立、市民、日赤などの公的病院や個人病院、診療所にいるので、他科の先生の紹介やインターネット、新聞、雑誌、口コミで見つけてください。

 また、この症状に隠れて胃がん、食道がんの早期発見が遅れないよう、定期的に内視鏡検査を行うこともお勧めいたします。

徳島新聞2008年5月11日号より転載

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