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【質問】 両ほおに「しろなまず」

 75歳の女性です。両ほおの上に「しろなまず」ができて悩んでいます。何が原因でできたのか分かりませんが、気づいたのは去年の9月で、皮膚科で薬をもらって塗っています。少しはよくなっているように思いますが、顔の皮膚が全体に赤くなっているようで、これから広がるのではないかと毎日悩んでいます。私は2年前くらいから血圧の薬を飲んでいて、白内障と目にアレルギーがあります。



【答え】 尋常性白斑 -対症療法を根気よく-

さかお皮フ科クリニック 坂尾 佳久(徳島市国府町井戸)

 質問の「しろなまず」は尋常性白斑じんじょうせいはくはんという皮膚疾患の俗称です。この病気の症状、発症原因、治療などについて説明します。

 尋常性白斑は、皮膚に後天性(生まれつきではない)の脱色素斑がみられる病気です。皮膚のどの場所にも生じ、毛髪のある部分では白髪を伴います。乳幼児から高齢者まで広くみられ、形は円形から地図状を示すものまでさまざま。境界がはっきりした脱色素斑です。

 病変や発生部位から、3つのタイプに分類されます。全身性・対称性で広範囲にみられる汎発はんぱつ型、1個から数個の白斑が局所にみられる限局型、皮膚の神経に沿う分節型です。

 発生メカニズムは、皮膚の色を作っている細胞(メラノサイト)が減少、もしくは消失するためです。発症原因は不明ですが、2つの説があります。それは、自己抗体が自分自身のメラノサイトを破壊する自己免疫説と、白斑が神経に沿って分布し白斑部に一致して発汗異常がみられることから考えられる神経説です。内臓の病気との関連については、甲状腺疾患、糖尿病、自己免疫疾患などを合併することがあります。

 現在行われている治療は、副腎じん皮質ホルモンの外用や内服、紫外線照射、皮膚移植術などで、根本的なものはありません。

 副腎皮質ホルモンの外用は、内服に比べて全身への副作用が少ないため、よく用いられます。初期の白斑では外用のみで色素が再生することが多いですが、古い白斑では効きにくくなります。長期外用になると毛細血管拡張や皮膚委縮などの副作用がみられるので、効果がないときはほかの方法を考えます。副腎皮質ホルモンの内服は汎発型に用いられます。特に進行期の汎発型に有効とされますが、長期内服による副作用には十分注意が必要です。

 紫外線治療は、光感受性薬剤を外用もしくは内服した後に照射するPUVA療法が一般的で、有効性が確認されています。最近は、UVBのうち、一部分の波長のみを使って薬剤も必要としないナローバンドUVB療法が、汎発型など広範囲な場合の治療に有効と考えられています。

 皮膚移植術は、主に安定した古い分節型の白斑が適応となります。

 ほかの治療法としては、活性型ビタミンD3外用剤やタクロリムス軟膏(どちらも保険適応外)があり、有効と報告されています。またカバーマークを使用したり、角質層を着色したりする方法もあります。大部分が脱色した進行型白斑では、色素沈着を期待することは難しいので、残った色素を脱色する治療法も行われています。

 尋常性白斑は皮膚疾患の中で最も治りにくい病気の一つですが、個々の症例に応じた、さまざまな対症療法を根気よく行うことで改善が望めます。質問では少しずつよくなっているようですが、心配しているようですので、現在受診している皮膚科の先生に相談することをお勧めします。

徳島新聞2008年3月30日号より転載

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