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【質問】 仕事中、どきどきし震える

 27歳の娘のことで相談します。7年前、事務の仕事に就いて1年半たったころ「続けるのがとてもつらい」と退職しました。2-3カ月引きこもり状態になり、心療内科の初診でうつ病ではないかと診断され、投薬も受けたのですが、思ったように改善しませんでした。カウンセリングで「社会不安障害」と診断され、今に至っています。娘は半年くらいで再就職しました。このまま逃げていては自分が駄目になると思ったようで、あえて接客の仕事を選んで頑張って続けています。つらい状態には波があり、落ち込んだときは仕事を辞めたいと強く思うそうで、手に汗をかいたり、どきどきしたり、震えたりします。体調面では、食欲もあるし、睡眠も十分、生理もあるようです。ただ、仕事を無理して続けていると治らないのではと心配しています。薬を長期間飲んでいることも不安です。



【答え】 社会不安障害 -カウンセリング受け服薬を-

城西ビオスクリニック 院長 松原 正(徳島市佐古一番町)

 「仕事を続けるのがとてもつらい」とのことですが、相談の内容だけではつらい内容がよく分かりません。従って質問内容を基に、推測を交えながら回答します。

 社会不安障害とは、対人、社交の場面で「恥ずかしい思いをする」ことに対して、強い恐怖や不安を感じる病気です。その状況を避けようとするあまり、会社に行けないこともあります。

 「このまま逃げていては自分が駄目になると思い、あえて接客の仕事を選んで頑張って続けている」とのことですが、自分の弱さを克服しようと懸命に努力している姿がうかがえます。しかし、努力しているにもかかわらず、苦しさが解消されないということなのでしょう。動悸(どうき)がしたり身体が震えたり、手に汗をかくなどは、不安や緊張に対して体が敏感に反応しているということです。やはり、一定期間の薬物療法が必要だと思います。

 視点を変えて、ストレスと認知の関係からみてみましょう。例えば、職場の人間関係でちょっとしたトラブルがあったとします。ある人は「やっかいだけれども、大丈夫」と乗り切る。別の人は「ストレスに対処できない。自分は駄目な人間だ」と悩んでしまう。同じ出来事に遭遇したとしても、後者は仕事がつらくなるものです。

 娘さんの場合は、もともとストレスに弱い傾向があるように思えます。例えば<1>周囲の物事に過敏に反応してしまう<2>自分の悪い側面についてどっぷり考え込む<3>自分の考えや気持ちを表現できない<4>人によく思われたい<5>失敗してはいけない-などの傾向があるのではないでしょうか。こうした人は、抑うつ感・自己不全感・不安緊張感などの症状が起きて、悩みがちです。現在の状況があまりにもつらいものであれば、もう少し対人的な負担の少ない仕事に変わるほうが良いかもしれません。ただ、ストレスにもバランスがあり、会社に行くことで何かしらの変化が得られ、それに合わせて自分を変えたり、適応させたりすることが良い刺激になる場合があります。

 「つらい状態に波があり、落ち込んだときには仕事を辞めたいと強く思う」ということは、気分に波がありながらも仕事を継続できているとも受け取れ、以前より改善している印象を受けます。ですから、現在のように通院して服薬するとともに、臨床心理士のカウンセリングを受けながら、何かしらの仕事を継続することが良いように思えます。

徳島新聞2008年3月16日号より転載

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