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【質問】 目がかゆく鼻水も出る

 43歳の男性会社員です。春先になると目がかゆくなり、鼻水がでてきます。ひどいときはせきに悩まされます。目がかゆく、鼻水が出るのは我慢できるのですが、せきが続いてぜんそくの症状が出ると夜も眠れなくなり、かなりつらいです。もし早めに対処できる方法があれば教えてください。



【答え】 アレルギー性鼻炎 -症状の緩和、薬で可能-

河野内科 河野 知弘(徳島市大道3丁目)

 春が来た。スプリング ハナ カム。春の訪れを趣でなく、涙と鼻水で感じるのはつらいことです。2月から5月にかけて、花粉症やアレルギー性鼻炎に悩む人は大勢います。その原因がスギやヒノキなどの花粉であることは広く知られ、天気予報でもスギ花粉の飛散予報が発表されています。

 スギ花粉は〈写真〉のような格好をしていて、トゲがあることから目や鼻、のどの粘膜にくっつきやすくなっています。くっついた花粉は体にとって異物ですから、涙や鼻水を分泌してそれを洗い流そうとします。つまり、身体の感染防御機構の働きなのです。

 スギ花粉が粘膜にくっついても体に何も感じない人が大部分です。もしスギ花粉そのものが悪さをするのなら、スギ花粉を多く吸うような山奥の杉林に囲まれて生活している人に多く発症するはずです。ところが花粉症は、都会で空気の汚れたところで生活する人に多くみられます。ディーゼルエンジンの排ガスに含まれている微細粒子などが粘膜を弱くし、スギ花粉をくっつきやすくさせるためと考えられています。

 過剰な感染防御機構が働くことをアレルギー反応といいます。アレルギーとはラテン語のallo(ほかの)+erg(力)に由来します。すなわち、本来の目的から違った方向に働く反応のことです。

 気管支ぜんそくもアレルギー性疾患の代表です。しかし、花粉の粒子は大きいため、気道にまではなかなか届きません。なぜだか分かりませんが、体の一部にアレルギー反応が強く出ていると、ほかの部位のアレルギー反応は弱くなります。したがって相談者のせきがぜんそくによるものなのか、鼻水が気道に流れ込んで起こるのかは、もう少し詳しく問診したり気道の過敏性を検査したりする必要があります。

 対処法ですが、原因が分かっている場合は、それを取り除くことが一番よい方法です。しかし、広い範囲から飛んでくる花粉を吸わないでいられるでしょうか? 杉林をすべて切り取ってしまうことはできるでしょうか? せいぜいゴーグルにマスク、花粉がくっつかないサラサラとした生地の上着などで防御することが精いっぱいだと思います。

 生体内でアレルギー反応が起こるメカニズムは、解明されてきています。そして、そのさまざまな段階をブロックする薬剤も開発され、日常診療に広く用いられています。特に効果的なのは吸入ステロイドです。ステロイドと聞くと、副作用が怖いとのイメージを持つ人が多いですが、吸入後は体内で分解されるため、副作用はほとんどありません。

 症状の程度により、抗ヒスタミン剤から抗アレルギー剤、吸入ステロイドまで使い分けたり、分量を増減させたりします。アレルギー反応を効果的に抑えるためにはきめ細かい診療が不可欠なので、アレルギー科、呼吸器科、耳鼻咽喉科を受診されることを勧めます。

徳島新聞2008年2月10日号より転載

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