徳島県医師会 トップページへ

  • 文字サイズ標準
  • 文字サイズ拡大
文字サイズ変更について
県民の皆さまへ

【質問】 子どもが耳の痛み訴える

 9歳の男の子のことですが、耳が痛いと訴えます。腫れているようには見えませんが、本人は違和感があるようです。耳の内側なのか外側なのかもはっきりしないのですが、何かが当たったとか、打ちつけたとかはしていないようです。6歳くらいのときに、中耳炎にかかったことがありますが、治っています。再発しているのでしょうか。



【答え】 中耳炎・外耳炎 -投薬や鼓膜切開で治療-

中村耳鼻咽喉科クリニック 中村 克彦(板野郡北島町高房)

 まず耳の構造について説明します。耳は〈図〉のように外耳、中耳、内耳でできています。外耳は鼓膜より手前で、耳介と外耳道で構成。中耳は空気で満たされた中耳腔(くう)と音を伝える耳小骨からなり、耳管を介して鼻の奥とつながっています。また内耳はその奥の側頭骨という骨の中にあり、音の振動を電気信号に変換する感覚細胞があります。

 質問の「耳が痛い」という訴えは、外耳や中耳の急性炎症、すなわち急性外耳炎や急性中耳炎によることが多いです。「見た目には腫れているような気がしない」とのことですが、一般に見た目で判断できるのは、耳介と外耳道の入り口部までで、それより奥を観察するには、外耳道の奥と鼓膜まで照らす光源と、耳鏡や鼓膜鏡といった道具が必要になります。

 急性外耳炎は耳かきなどで外耳道に傷をつけたり、プールで泳いだときに耳に水が入ったりして起こることが多く、夏に多い疾患です。耳介を引っ張ったり、外耳道の入り口を押したりすると痛みが増すのが特徴です。耳鏡を用いて観察し、外耳道が赤くなっていたり腫れていたりすることで診断、抗生物質の軟膏(なんこう)や飲み薬と消炎鎮痛剤で治療します。

 急性中耳炎は風邪をひいたときに鼻やのどの細菌が耳管を通じて中耳に進入して起こることが多く、風邪をひきやすい冬に多いことが特徴です。5~6歳までの小児に多く、耳痛のほかに発熱や耳漏(耳からの膿(うみ))をきたすことがあります。一度治っても風邪をひくたびに繰り返すことがあります。

 耳が痛いと訴えられない乳児では機嫌が悪く、泣いてしきりに耳に手をもってゆくなどの様子がみられます。症状が強い場合には、鼓膜切開により中耳にたまった膿を取り除きます。

 もう一つ、中耳の病気で多いのが、滲出(しんしゅつ)性中耳炎という病気です。急性中耳炎が治りきらなかった場合に起こることが多く、中耳に液体(滲出液)がたまって聞こえが悪くなります。

 耳の痛みを訴えることは少なく、呼んでも返事をしなかったり、テレビの音を大きくしたり、近づいてみたりします。慢性の経過をとることが多く、鼓膜が混濁、陥凹(かんおう)し、聴力検査で難聴があることで診断します。治療は、鼓膜切開により滲出液を取り除きます。

 ほかにも頻度は少ないですが、真珠腫性中耳炎や癒着性中耳炎などの慢性で難治性の中耳炎もあります。どちらも耳鏡や鼓膜鏡で診断することが可能です。

 質問の子どもの場合、急性外耳炎もしくは急性中耳炎が考えられますが、耳に炎症が認められない場合は、周囲の組織の炎症、例えば歯の放散痛として耳に痛みを感じることもあります。正確な診断と治療のため、耳鼻咽喉科専門医の受診をお勧めします。

徳島新聞2008年1月13日号より転載

© TOKUSHIMA MEDICAL ASSOCIATION.