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【質問】 毎晩おねしょをする娘

 小学2年生になる娘のおねしょが毎晩続いています。昨年、小児科の先生に相談すると、トフラニール錠10ミリグラムを処方してくれましたが、あまり効果がありませんでした。寝ている間におねしょを2回しているようで、「明け方1回にならないと薬を服用しても効かない」と言われました。4年生くらいになれば治まってくるとも言われましたが、5年生になれば宿泊訓練もあるので不安です。毎晩というのも気になります。娘も気にしています。今はまだ見守るしかないのでしょうか。治療するとなるといつぐらいがいいのでしょうか。娘の前では平気な顔をしていますが、どのように対処すればいいのでしょうか。



【答え】 夜尿症 -寝る前の水分摂取控えて-

阿南共栄病院 診療部長・小児科部長 上田 隆

 小学生になっても、10人に1人は夜尿をしているといわれています。「いつ治るのかしら」と心配しているお母さんも多いことでしょう。「起こすな」「構うな」「怒るな」の夜尿症治療の三原則はよく知られていますが、その理由について、分かりやすく解説してみたいと思います。

 まず「起こすな」です。大人は睡眠中に脳から抗利尿ホルモンが分泌され、腎臓に働いて尿が作られなくなるので、朝までぐっすり眠ることができます。夜尿をする子どもたちは、このホルモンの分泌が少ないのです。そのため浸透圧の低い、薄い尿がたくさん出ます。この夜尿症のタイプを多尿型といいます。

 年齢が進むと、必ず十分分泌されるようになり、夜尿は治ります。しかし夜中に起こしてトイレに連れていくと、睡眠が妨げられて抗利尿ホルモンが分泌されなくなり、夜尿を繰り返すことになります。だから、夜中に起こしてはいけないのです。

 このタイプの夜尿症の治療薬には、内服薬(商品名トフラニール)と抗利尿ホルモンの点鼻薬(デスモプレッシン・スプレー10)があります。どんなにいい治療法でも、寝る前に水分をたくさん摂取すると、効果はありません。1日に必要な水分を夕方までに取って、夕食後は控えるようにしましょう。

 次に「構うな」です。夜尿症のほかの原因として、膀胱(ぼうこう)が小さいことも考えられます。子どもは遊びに夢中になると、おしっこに行きたいのを我慢して遊び続けます。その結果、膀胱は少しずつ大きくなるのです。ところが、大人が気をきかして、モジモジした子どもを見てすぐトイレに行かせていると、膀胱はなかなか大きくなりません。この夜尿症のタイプを膀胱型といいます。

 このタイプは、昼間に尿を漏らしたり排尿の回数が多かったりすることから診断できます。膀胱を大きくしたいなら、構わないことです。抗コリン剤(同 ポラキス、バップフォー)の内服薬も効果があります。多尿型と膀胱型を合併する混合型の子どももいますが、この場合は点鼻薬と内服薬を併用すれば効果的です。

 最後に「怒るな」です。「夜尿は子どもが涙をおしっこに変えて泣いているのだよ。泣いて目を覚ました子どもを怒ることができるかい?」。そう言った方がいます。実に言い得て妙だと感心しました。どうか怒らずに子どもの心の苦しみを解いてあげてください。

 宿泊訓練に行った夜は、夕食後は絶対に水分を取らず、午後11時まで頑張って起きておくこと。しっかり排尿してから寝てください。薬でコントロールできていなければ、夜の2時ごろ担任の先生に起こしてもらってください。修学旅行で夜尿をしなかった成功体験をきっかけに、治った例もよくあります。成功したらうんと褒めてやってくださいね。

徳島新聞2007年8月5日号より転載

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