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【質問】 登校時に頭痛や腹痛訴え

 中学1年生の娘が登校時間になると「頭が痛い」とか「おなかが痛い」と言い出して、学校へ行くのを嫌がります。入学して4月から環境が変わったのが原因かもしれません。うそをついているようにもみえませんので、無理やり行かせるのもどうかと思い、調子が良くないときは休ませるようにしています。ただ最近、欠席する日が増えてきて、このままでいいのか迷っています。親の私にも、先生にも相談できず、精神的に追い詰められているのではないかと心配です。どこか子どものカウンセリングができるところはあるのでしょうか。



【答え】 心身症 -まず病気の有無診断を-

徳島赤十字病院 小児科 中津 忠則

 入学するなど環境が変わると、子どもの心や体に変調をきたすことがよくあります。多くは新しい環境に慣れるに従って自然に治まってきますが、元気に学校生活を送る上で支障をきたすこともあります。

 ご相談の子どもさんのように頭痛や腹痛などの症状が目立つ場合は、一度医療機関を受診し、原因となる体の病気がないかどうかの診断を受けることが大切です。診察や検査で異常がなければ、頭痛や腹痛などの症状が出ているだけの状態で、そのために学校に行きづらくて苦しんでいると考えられます。このほか頭痛の原因に起立性調節障害、腹痛の原因に過敏性腸症などの病気があり、朝方に症状が目立つことがあります。

 症状だけが目立つ場合や起立性調節障害・過敏性腸症などの場合は、いずれも心身症の状態であると考えられます。心身症は「身体疾患のうち、その発症と経過に心理社会的因子が密接に関与し、器質的ないし機能的障害の認められる病態を呈するもの。ただし、神経症、うつ病など他の精神障害に伴う身体症状は除外される」と定義されています。つまり、身体に症状や病気があるが、その症状の出方や治まり方、治りにくさや治りやすさに、子どもの気持ち、心理状態、置かれている状況、家庭・学校の環境などが強く関係している状態を心身症と言います。

 子どもは、自分の感情や気持ちを適切に言葉で表現しにくく、環境の変化や対人関係の影響で心身が変化しやすいことなどから、心身症を起こしやすいといわれ、小児科外来を多くの子どもたちが受診しています。

 対応上の留意点としては、子どもの心身症はストレス状況に対し、何とか適応しようとして必死で頑張って、頑張りきれなくなっている状態と理解することが大切です。

 また症状そのものが苦痛であり、我慢しにくいものであるので、軽減を図るようにします。同時に子どもの心理社会的要因を明らかにし、その改善を行うことが最も重要です。

 ご相談の子どもさんが心身症の状態であるとすると、症状のつらさを理解して無理強いをせず休養させていますので、上手に対応していると思います。一般的には、症状が理解されないことや、頑張ってきた子どもにさらに無理をさせる、きちんと休養させない-などが改善を長引かせているようです。

 子どもさんが精神的に追い詰められ、だれにも相談できない様子でしたら、専門機関でカウンセリングや遊戯療法などの治療を受けることをお勧めします。具体的な専門機関については、徳島県医師会や保健所などに相談してください。

徳島新聞2007年7月1日号より転載

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