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【質問】 腕を上げると痛む

 45歳の女性です。腕を上げようとすると痛みがあり、肩までしか上がりません。自然に治るものかと思い、そのままにして1カ月が過ぎますが、痛みが取れません。五十肩でしょうか。じっとしていたら動かなくなるのではと不安で、週に一度はバレーボールの練習に行くようにしていますが、痛みが気になり思うように腕を動かせません。高齢の母親の介護をするのにも少し支障が出てきました。このままにしていてもいいのでしょうか。それとも病院へ行った方がいいのでしょうか。



【答え】 五十肩 -症状に合わせ治療法選択-

岡田整形外科 岡田 勝良(鳴門市大津町吉永)

 質問からは五十肩が疑われます。五十肩は40歳代以降に起こる肩関節の疼痛(とうつう)と運動制限をきたす病気です。肩関節周囲炎ともいいます。症状は、腕を上げる、横に開く、後ろに回すなどの動作ができなくなります。髪をとく、体の後ろで帯を結ぶなどの際に痛みがあります。レントゲン検査では特に異常は見られません。

 症状のうち、痛みが主である急性期には、それを取り除くことに主眼を置きます。まず、肩関節を三角きんで固定して安静にします。薬物療法として、湿布などの外用薬を用いるほか、痛み止めなどの薬を飲みます。ステロイド製剤かヒアルロン製剤の肩関節内注射もあります。また理学療法では、入浴などの温熱療法が効果があります。痛みがひどいときは安静が重要で、運動はしてはいけません。

 一方、慢性期で肩の動きが悪くなれば、運動療法が主になります。肩を温めたり電気をかけたりして痛みを取り、筋肉を軟らかくします。

 運動療法の一つは、医者の手で行うもので、患者さんの腕を内側に動かす筋肉と、内方に回す筋肉の抵抗運動をします。医者が患者さんの腕を持ち、前後、外方へと繰り返して動かしたり回したりする方法もあります。

 もう一つは、機械を使った体操です。その方法には<1>天井につけた滑車に綱を通し、いい方の手を左右に動かすことで、動きの悪い肩を上げる頭上滑車体操<2>長さ一メートル、太さ四センチほどの棒を使って、肩の曲げ伸ばしなどを行う棒体操<3>体を前に倒し、悪い方の肩の手で一-三キログラムの重りを持って、前後、左右、回すの振り子運動をするコッドマン体操<4>壁に取り付けた握り手の付いた円形の器具・輪転器を使った運動<5>壁の前や横に立ち、壁に付けた指先をシャクトリムシのように少しずつ上方に動かし、肩を前や横に上げる「シャクトリムシ運動」-があります。

 病院で行う理学療法だけでは時間が少ないので、自宅で行う運動は大切です。日常生活では、できるだけ悪い肩の手を使うようにします。

 急性期・慢性期にかかわらず、肩を冷やさないようにしてください。

 五十肩とよく似た病気には、腱板(けんばん)が切れたものや、石灰が沈着して炎症を起こしたもの、腱板の炎症やけがによって肩が動かなくなったもの、滑液包の炎症などがあります。五十肩と思っても、近くの整形外科医に診てもらい、確かな診断と治療を受けるようにしてください。

徳島新聞2007年5月20日号より転載

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