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【質問】 意欲わかず憂うつな毎日

 20歳の男性です。営業関係の仕事をしています。最近特に、仕事に対しての意欲がわかず、食欲もなくなりました。春からだと体重が五キロほど落ちました。体もだるく、憂うつな毎日が続いています。以前、テレビで「うつは1カ月」と言っていたことを思い出して不安になり、病院に行こうかどうしようかと迷っています。このような症状の場合は、病院に行った方がいいのでしょうか。



【答え】 うつ病 -休養と充電が第一-

枝川クリニック 院長 枝川 浩二(徳島市大和町2丁目)

 「意欲がわかず、憂うつな毎日が続く」ことから、あなた自身では、うつ病を疑って不安になっていると推察します。相談内容からは、やはりうつ病が疑われるので、精神科、神経科、心療内科、メンタルクリニックなどの専門医を受診することをお勧めします。受診することに抵抗があるのなら、かかりつけの医療機関でもよいと思います。

 うつ病は誰でもなる可能性があり、決して珍しい病気ではありません。厚生労働省の調査では、日本人の15人に1人は、一生に一度はうつ病になる可能性があるとのことです。最近では、新聞やテレビでうつ病を取り上げた記事や番組をよく目にするようになりました。以下、うつ病について説明します。

 人は誰でも仕事で大きな失敗をしたり、悲しいことがあったりすると、気分が落ち込んだり憂うつになりますが、多くの場合は数日で回復します。ところが落ち込んだ気分が2週間以上も続き、日常生活に支障がでる場合を、うつ病といいます。テレビ番組で「うつは1カ月」と放送されていたのは「うつの症状が1カ月以上続く場合には、うつ病が疑われるので、医療機関を受診しましょう」という呼び掛けであったように記憶しています。

 うつ病は、気分の病気といわれています。気分が落ち込み、悲しく憂うつとなるのが中心的な症状です。何事もおっくうで気力が出ず、これまで好きだったことへの興味や喜びがなくなるなどの意欲の低下に加えて、集中力、記憶力、判断力の低下といった思考力にも影響を与えます。また、眠れない、食欲がない、体重が減る、身体がだるい、疲れやすい、胃がもたれる、胸がどきどきする、頭痛、肩こり、めまい、便秘、性欲低下など、さまざまな身体症状も表れます。診断は、これらの症状や身体的所見を総合的に判断して行います。

 うつ病は、気の持ちようで起こるものではありません。環境の変化やストレスなどにより、セロトニンやノルアドレナリンなど脳内の神経伝達物質の働きが悪くなることによって起こると考えられています。脳の働きが一時的に低下して、バッテリー切れの状態となっているのです。

 従って治療は、休養して充電することが第一です。心と体をゆっくり休めることが大切です。抗うつ薬を中心とした薬物療法とカウンセリングも必要です。抗うつ薬は、SSRI、SNRIといわれる副作用が少なく服用しやすい薬が使われるようになりました。薬の効果は、1~4週間で徐々に表れてくるので、続けて服用することが大切です。また、回復は一進一退であり、周囲の理解とサポートが重要になります。

 うつ病はきちんと治療を受ければよくなるので、適切な治療を早期に受けることが大切です。これを機会に、ぜひ医療機関を受診することをお勧めします。

徳島新聞2006年10月1日号より転載

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