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【質問】 「プレ更年期」とは?

 30代の女性です。最近「プレ更年期」の女性が増えている、という新聞記事を読みました。30代でも更年期と同じような、のぼせや動悸(どうき)、不眠などのつらい症状が起こるそうです。更年期は閉経を迎える50歳前後というのに、なぜ若い時期に起きるのでしょうか?原因や症状、さらに対処法についても教えてください。



【答え】 自立神経失調症状など -カウンセリングや薬物療法を-

中山産婦人科 中山 孝善(板野郡藍住町東中富)

 まず最初に断っておかなくてはならないのは、「プレ更年期」という医学用語はなく、ごく一部の産婦人科医師がこの言葉を使いはじめ、これをマスコミが引用して広がっているのが現状であるということです。

 直感的に更年期になる前という意味で使ったのかもしれませんが、更年期のように卵巣の老化による卵巣ホルモン欠乏を起こす状態とはまったく関係がありません。更年期が差し迫っているとの誤解を招くように思え、現在は少なくとも医師が使うのは適当でない言葉だと思います。

 前置きはさて置き、30代の若い女性でも突然、何らかの原因で卵巣の働きが悪くなると、卵巣ホルモン(エストロゲン)欠乏状態になり、質問のような更年期障害と同じような自律神経失調症状(ほてり、のぼせ、動悸、発汗など)が起こってきます。そのときには月経が不規則になってくるので比較的自己診断も容易ですし、卵巣ホルモンを整える薬剤が産婦人科にあるので処方してもらえばよく効きます。

 これは卵巣自体の老化が人より早く始まっているというのではなく、卵巣での排卵を促す脳からの刺激ホルモン(卵巣刺激ホルモン)が、一時的にアンバランスになっているためであり、こうした状態は多くの外的刺激に左右されて起こります。昔から強いショックやストレスを受けると一時的に月経がなくなったり、不規則になったりするのはこれに当たります。これらの外的刺激が解消されると症状も自然に軽快し、月経も回復してくるのはよく経験することです。

 これらとは別に、最近のストレス過多の社会では、若い女性にも(更年期の女性も)卵巣機能の低下と直接的に関連のない社会的な環境や個々の性格からくる自律神経失調症状や精神神経症状(不眠、不安、抑うつ、孤独感など)が出やすい環境にあります。

 これは直接、卵巣ホルモンと関係しないので、ホルモン治療を行ってもよくなりません。心療内科や精神神経科などの専門医のアドバイスや治療が必要な方も多くいます。

 このように若い女性の自律神経失調症状や精神神経症状では、卵巣ホルモンが欠乏していることも、欠乏していないこともあります。いずれにしても外的ストレスに対する反応として出ている症状である場合が多いので<1>ストレス解消法として生活のリズムを変える(仕事や休養のペースを考える、適度な運動、趣味を生かすなど)<2>ストレスを克服するための心療内科や精神神経科などの専門医のカウンセリングを受ける<3>必要に応じて自律神経調整剤やホルモン剤、向精神薬などの薬物療法を受ける-などが解決策になるでしょう。

徳島新聞2006年1月15日号より転載

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