徳島県医師会 トップページへ

  • 文字サイズ標準
  • 文字サイズ拡大
文字サイズ変更について
県民の皆さまへ

【質問】 最近、胸やけがする

 30代後半の男性です。最近、食道付近で胸やけがします。胃腸薬をのむと少しよくなるのですが、しばらくすると、また調子が悪くなります。そのときは、食べ物が食道に当たっている感じがします。それ以外の調子のいいときは大丈夫です。どこが悪いのでしょうか。



【答え】 胃食道逆流症 -受診し内視鏡検査を-

阿部内科胃腸科 阿部 秀幸(名西郡石井町高川原)

 あなたの胸やけはどんなときに悪化するのでしょうか。甘い物を食べたときや、前かがみの仕事をしたときに悪化するのであれば、胃食道逆流症が考えられます。

 胃食道逆流症とは、逆流性食道炎と同じ病気と考えてもらって構わないと思います。胃の粘膜は胃酸で溶けないように粘液を出して自分を守っていますが、食道粘膜は胃酸に弱く、食道に胃酸が逆流すると食道の下端にびらんや潰瘍(かいよう)ができます。これが逆流性食道炎です。

 しかし、最近では内視鏡(胃カメラ)検査で異常が無くても、酸の逆流による胸やけが出現する場合があることが分かってきました。そこで食道のびらんや潰瘍の有無にかかわらず、胃酸が逆流することによって起こる病態をまとめて、胃食道逆流症と呼ぶようになってきました。

 症状は胸やけ、酸っぱいものが上がってくる、食後に胸の付近が痛む、横になると胸やけが増す、胸やけで夜間目が覚める、声がかすれる、せきが出る-などです。

 診断では、もちろん内視鏡でびらんや潰瘍の有無を調べるのは重要ですが、内視鏡で異常の無い場合もあるので問診が必要となります。胸やけをそれと認識していないこともあり、問診表を使用し、食事との関係、姿勢による症状の変化などを点数化し、客観的に診断することが必要です。

 胃酸逆流の原因でよく知られている病気には、食道裂孔ヘルニアがあります。しかし、最近では食道裂孔ヘルニアが無くても胃酸が逆流する場合や、逆流した胃酸が長く食道に留まる場合があることも分かっています。また、胃の手術を受けた人は、胆汁や膵液(すいえき)が逆流して食道炎を起こしている場合もあります。そのほか内服薬の一部(カルシウム拮抗(きっこう)剤、亜硝酸剤など)には、胃酸の逆流を増加させるものもあります。

 治療は、生活指導として▽腹圧を上げるような重い物を持ったり、前かがみで仕事をしたりしない▽食後すぐ横にならず上半身を起こしておく▽寝る前に多く食べない▽脂肪の多い物や甘い物は控える▽腹部を圧迫するガードルやベルトをやめる▽便通をよくする-などが挙げられます。

 薬物療法としては、胃酸を強力に抑えることができるH2受容体拮抗剤や、プロトンポンプ阻害剤があります。これらの投薬によって、症状はほとんど改善します。質問の男性は「薬をやめると症状が悪化する」とのことですが、最近の市販の内服薬にはこのH2受容体拮抗剤が含まれている薬があるので、これをのめば一時的にはよくなります。しかし、胃酸の逆流を治しているのではなく、胃酸の分泌を抑えていることによって症状が改善しているので、薬をやめると胸やけは再燃します。

 従ってある程度、長期的に薬を服用しながら生活を改善し、少しずつ薬を減量していきます。しかし、薬を減量したり、中止したりすると症状が再燃する場合があるので、そのような人は薬を続ける必要があります。

 一般的には薬物療法が主流ですが、年齢や症状によって手術することもあります。手術といっても、最近では腹腔(ふくこう)鏡や内視鏡を用いて行うことが多くなってきています。

 以上、胃食道逆流症について説明しましたが、胸やけを訴える病気としては、そのほかに食道癌(がん)、胃炎、心疾患などがあるので、これらとの鑑別も必要です。特に食事がつかえるような感じは、食道癌の場合にも認められる症状なので、一度、内視鏡検査を受けられることを勧めます。

徳島新聞2005年12月11日号より転載

© TOKUSHIMA MEDICAL ASSOCIATION.