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【質問】 歩くとひざから下が痛い

 75歳の女性です。2カ月前から、歩くとひざから下の部分が痛みます。夜も痛み止めを使っています。周囲には「年なので良くならないだろう」と言われ、整形外科の先生からは「歩けなくなるかも」と言われます。急に腰の辺りに力が入らなくなることもあります。現在はリハビリを行い、処方された薬をのんでいますが、このまま通院しても良くなるか不安です。でも、夫と二人暮らしなので歩けないと生活できません。どうすればいいでしょうか。



【答え】 腰部脊柱管狭窄症 -レントゲンやMRI検査を-

新野医院 新野 浩史(板野郡板野町下庄)

 相談の女性の訴えは、間欠性跛行(はこう)といわれる症状と思われます。この症状は主に腰椎(ようつい)の変形による腰部脊柱管(せきちゅうかん)狭窄(きょうさく)症や、血管が動脈硬化などで詰まって起きる慢性動脈閉塞(へいそく)症に見られます。

 腰部脊柱管狭窄症とは椎間板の突出、脊椎骨のずれ(すべり症)、靱帯(じんたい)の圧迫などにより脊柱管が狭くなって神経が圧迫され、神経周囲の血流が低下する病気です。それに伴い臀部(でんぶ)や下肢に痛み、しびれなどの症状が表れます。

 この病気による症状の変化には、慢性動脈閉塞症と比べて次のような特徴があります。<1>安静時に症状はないが、立位でも徐々に痛み、しびれなどの症状が強くなる<2>歩行して痛みなどが出てくるが、前かがみになって休むとまた歩行ができるようになる(間欠性跛行)<3>自転車には楽に乗ることができる-などで両者の鑑別は可能かと思います。

 また「腰の辺りに力が入らない」との訴えから考えると、相談の女性の下肢の症状は腰部脊柱管狭窄症による可能性が高いと思われます。

 検査は主に腰椎レントゲン、MRIなどを行います。レントゲン検査では脊椎の変形・脊椎骨のずれの程度、骨粗しょう症の有無を、MRI検査では椎間板突出、靱帯の肥厚などによる神経の圧迫の程度を調べます。

 治療は、まず以下のような保存的治療を行います。

 【薬物療法】循環促進剤(プロスタグランディン製剤)、ビタミン剤、消炎鎮痛剤などを使用し、症状を和らげます。

 【ブロック療法】硬膜外ブロック(腰部・仙骨)法と神経根ブッロク法があり、局所麻剤の注射によって痛みを取ります。

 【装具療法】腰椎の伸展(後方への反り)を防ぐ装具などで腰椎の安静を行います。

 【リハビリテーション】温熱、牽引(けんいん)、体操療法などがあります。

 手術治療はさまざまな保存的治療を行った結果、効果がなく、排尿障害、下肢の麻痺(まひ)、間欠性跛行が強い場合に行います。

 相談の女性は75歳という年齢から、慢性動脈閉塞症などの血管の病気や、他の関節の病気を合併している可能性もあります。主治医とよく相談し、根気強くさまざまな治療を続けることによって症状が少しずつ和らいでいくと思われます。

徳島新聞2005年9月25日号より転載

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