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【質問】 夜、尿意で頻繁に起きる

 75歳の主婦です。もう3年も前から、就寝中1時間おきにトイレに起きるので、眠りが浅くてすっきりしません。そのうえ、近ごろはトイレに行こうと思って立つと「サーッ」と流れ、間に合わない始末です。肌着を何度も着替えなければならないので、旅行にも出かけられません。止めようもなく、先が思いやられています。どうしたらいいのでしょうか。また、ほかの女性にもこんなことがあるのでしょうか。



【答え】 夜間頻尿・尿失禁 -原因に応じて保存的治療-

山城クリニック 松岡 敏彦(徳島市山城西1丁目)

 質問の女性は夜間頻尿と尿失禁が問題になっていると思われます。

 まず頻尿について説明します。健康な人の一昼夜の排尿回数は5~6回、多くても10回ぐらいです。夜間睡眠中には0~1回です。この回数の増加が頻尿で、特に夜間の回数が多いのが夜間頻尿です。

 原因としては<1>多尿症(糖尿病、心不全、腎疾患などで1日の尿量が増加しているとき)<2>膀胱(ぼうこう)容量の減少(膀胱周辺からの圧迫や瘢痕(はんこん)委縮、膀胱腫瘍(しゅよう)など)<3>膀胱への刺激(膀胱や後部尿道の炎症や結石)<4>神経性の頻尿<5>膀胱からの尿排出障害-などがあります。

 一方の尿失禁は尿が不随意に漏れ、衛生的・社会的に問題のある状態です。尿失禁には<1>腹圧性尿失禁<2>切迫性尿失禁<3>溢流(いつりゅう)性尿失禁<4>機能性尿失禁<5>反射性尿失禁-があります。

 <1>はせきやくしゃみ、笑う、重い物を持つ、激しい運動をするなど腹圧が加わったときに尿が漏れます。<2>は冷たい水で手を洗ったり、寒いところに出たりと、何らかの刺激によって強い尿意が生じるとともに尿が漏れます。<3>は尿排出障害のために膀胱内にかなりの残尿があり、常に膀胱が充満した状態になるため尿があふれて少しずつ漏れます。<4>は膀胱尿道機能に関係なく、認知症(痴呆症)や身体運動障害のために尿を漏らします。<5>は尿意を伴わず、膀胱内に尿がたまると膀胱収縮反射が不随意に引き起こされて尿が漏れます。

 高齢者の尿失禁は一般に在宅者の10%、病院や老人施設入所者の50%にみられると報告されています。また、尿失禁のある高齢者は1993年時点で約400万人といわれていますが、急速な高齢化に伴って50年後には約1000万人に増加すると推計されています。高齢者は突然に尿意が起こる切迫性尿失禁の割合が多く、年齢が高いほど尿失禁の頻度は増加します。

 また、尿失禁以外の疾患を持たない女性では、尿失禁が10~46%にみられると報告されています。女性は尿道が短く、骨盤内の臓器を支える骨盤底筋群が妊娠や出産、加齢などによって緩みやすいため、腹圧性尿失禁が起こりやすくなります。ただ、加齢とともに切迫性尿失禁の割合は上昇し、両方を併せ持つ混合性尿失禁も多くみられます。

 女性の尿失禁の治療では腹圧性尿失禁、切迫性尿失禁、混合性尿失禁などに分類し、それぞれに応じた保存的治療(骨盤底筋訓練、膀胱訓練、生活指導と薬物治療)を行います。これらの治療で効果が不十分な患者さんや外科的治療の対象となる患者さんらは、泌尿器科専門医による二次評価を行い、治療法を選択します。一度、専門医に相談してください。

徳島新聞2005年4月10日号より転載

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