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【質問】 指の間にあせものようなもの

 15歳の息子のことで相談します。別に肥満ではないのですが、よく汗をかきます。特に手のひらがいつも汗ばんでいて、夏になると、手の指と指の間に、あせものようなブツブツが出ます。はしや鉛筆がとても持ちにくそうです。一度、皮膚科で塗り薬をもらいましたが、効果はないようです。こまめに手洗いを勧めていますが、ほかにいい方法はないでしょうか。年齢とともに改善していくものなのでしょうか。



【答え】 多汗症を伴う汗疱 -医師との相談で治療法選択-

福原皮膚科 福原 耕作(小松島市南小松島町7)

 相談のように汗をよくかいて、暑い時季になると指と指の間にあせものようなブツブツができる状態としては、多汗症に合併した汗疱(かんぽう)(異汗性湿疹(しっしん))が疑われます。

 汗疱とは、夏季や季節の変わり目など、毎年決まった時季になると、手や足の指の側面、腹面、手のひら、足の裏などに小さな水ぶくれができたり皮がむけてきたりする病気で、小児から思春期に多く発症します。時にかゆみを伴いますが、自覚症状がないことも少なくありません。原因はよく分かっておらず、多汗症やアレルギー(金属、薬物)との関連も指摘されています。

 軽症例ではハンドクリームを1日に数回塗布するだけでも十分で、かゆみを伴う場合はステロイド外用剤を併用します。一般には季節的なものなので、汗疱自体が問題になることはあまりありませんが、多汗症を伴う場合は発汗のコントロールに苦慮することが多いようです。

 多汗症とは、文字通り汗の出(発汗)が多くなる状態です。発汗は体温調節に必要な生理反応ですが、生理的な範囲を超えて発汗が増え、日常生活や仕事に支障を来すほどになると、多汗症と呼ばれます。

 多汗症には全身性と局所性があり、多くの場合、手のひら、足の裏、脇など局所性で、特に手足のものを掌蹠(しょうせき)多汗症といいます。「手に汗を握る」と言われるように、これらの部位の発汗は、体温調節とは無関係で精神的な緊張で増加します。また掌蹠多汗症は、健康な思春期から青年期に多く、成長とともに自然軽快することもあることから、ホルモンや自律神経系の成長期における機能異常が考えられます。

 治療としては、程度が軽い場合は、市販の制汗剤で様子を見るのも一つの方法でしょう。また保険適応はありませんが、塩化アルミニウム液の単純塗布や密封療法も行われています。施設によっては、病変部を水道水に浸して電流を流すイオントフォレーシスという治療を行うこともあります。

 これらの方法が無効で、症状がひどく日常生活にも支障を来す場合には、胸腔鏡(きょうくうきょう)下交感神経切除術が適応になります。これは直径数ミリほどの棒状のカメラを胸の中に入れて、画面で確認しながら発汗の調節をする神経を遮断する手術法です。治療効果も高く、長期間にわたって手掌を無汗状態に保てますが、代償性発汗(ほかの部位の発汗が増えること)などの副作用もあり得ます。

 以上、代表的な治療法について簡単に述べましたが、今のところ決定的な方法はありません。汗疱、掌蹠多汗症ともに、自然軽快もあることから、症状の程度や日常生活への影響と、それぞれの治療法の長所、短所を考慮したうえで治療法を選択することが望ましいと思います。息子さんの発汗や皮膚の状態がどの程度の治療を必要とするか、もう一度、皮膚科専門医でよく相談のうえ、詳しく説明をしてもらってはいかがでしょうか。

徳島新聞2004年11月7日号より転載

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