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【質問】 長距離走ですねに痛み

 17歳の男子高校生です。陸上部に所属していて、長距離を走っています。最近、走るときに左足のすねのあたりに、ズキッとした痛みがあり、思うように走ることができません。疲労骨折ではないかと心配で、このまま走っていいものかどうか、病院に行った方がいいのか迷っています。しばらく休んで様子をみたほうがいいのでしょうか。病院に行けば、どのような治療を受けることになりますか。



【答え】 疲労骨折 -骨膜炎との見極めが大切-

田岡病院 整形外科部長 大西 純二(徳島市東山手町1丁目)

 ランニングをしていると、あし(下肢)の痛みはどうしても避けられないものがあります。このまま走っていいものかどうか迷うところだと思います。走ることができても十分な競技能力を発揮できなかったり、無理してしまったために、かえって復帰に時間がかかったりすることもしばしばあり、初期の適切な診断が重要です。

 このケースでは「走るときのすねの痛み」ということですが、ランニングに伴い、すね(下腿(かたい))の内側に痛みをおこす主なものに、脛骨(けいこつ)(すねの骨)疲労骨折とシンスプリントがあります。病態、治療方法が異なるために、これらの見極めが大切です。

 疲労骨折は、一度の力ではとても骨折が起こりそうにない程度の力が、繰り返しかかることにより、骨に破たんをきたすもので、ランニングでは脛骨に最も多く、ほかに大腿骨、中足骨(足の骨)にもおこります。痛みは、徐々にというより、突然やってきます。歩行時痛もありますが、完全にボキッと折れることはまずないので、無理すれば走ることもできます。

 しかし、発症初期では、ケンケン(片足でのジャンプ)が連続10回できないことが多く、圧痛(押さえたときの痛み)も強く、その幅は5cm以内と狭い範囲に集中していることが大半です。レントゲンでの初期変化は微小ですが、発症1~2週以内に、ほぼ診断がつきます。

 一方、シンスプリントは過労性骨膜炎ともいわれ、ランニングを繰り返すことによるヒラメ筋(ふくらはぎの筋肉の一つ)の使い過ぎが原因で、その付着部である脛骨の下3分の1に骨膜炎を生じたものです。軽症から重症まで痛みの程度には差がありますが、多くはケンケンを10回飛ぶことができ、圧痛部は疲労骨折より長く、脛骨の内側下3分の1を含み10cm前後に渡ります。レントゲンでは異常はみられません。

 つまり、疲労骨折は骨の障害であり、シンスプリントは骨自体でなく、骨につく筋膜、軟部組織の炎症です。痛みの部位が似ていますが、これらは別の障害で、シンスプリントが悪化して疲労骨折になるのではなく、疲労骨折は、当初から疲労骨折であるものがほとんどなのです。

 治療法として、疲労骨折の場合、ランニングを中止します。水泳、自転車などで心肺機能、筋力を維持しつつ、発症から4~6週でジョギング開始、3カ月前後でレース復帰が可能です。

 シンスプリントでは、痛みに応じてランニングできますが、強いキックを使う速いペース、硬い路面での練習は避けるべきです。膝(ひざ)を屈曲してアキレス腱(けん)を伸ばすヒラメ筋のストレッチング〈図〉をしっかり行い、筋疲労をとります。はり治療も有効なことが多いようです。多くは2~3週で軽快します。

 どこまでの練習なら可能か、あるいは休む場合は、どれだけ休めば治るか、という方針や見通しを適切に与えることが病院での治療になり、これが早期復帰には大切になります。スポーツ傷害は、ぜひスポーツ傷害専門医の診療、治療を受けることをお勧めします。

徳島新聞2004年6月6日号より転載

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