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【質問】 肩から指先まで激しい痛み

 75歳の女性です。7年前に、病院で神経反射性ジストロフィーと診断されました。リハビリをしたり、薬をのんだりしていますが、肩から指先までが激しく痛み、日に日にひどくなっていくようで、とても苦しいです。医師からは、もう治りませんと言われています。なんとか痛みを和らげることはできないでしょうか。ペインクリニックのことも教えてください。



【答え】 反射性交感神経性ジストロフィー

-早期に神経ブロック療法を-


徳島大学病院 神経内科 和泉 唯信

 この痛みは多くの場合、人生を変えるほど激烈であるにもかかわらず、他人には理解されないことが多く、苦労されていることと思います。

 お話から反射性交感神経性ジストロフィー(以下RSD)が考えられ、確かに治療が難しい病気です。「カウザルギー」という病名が使われることもあります。カウザルギーとは、ギリシャ語起源のkausis(しゃく熱)とalgia(痛み)を合成した言葉です。

 四肢に激しい痛み、触覚や痛覚に対する異常な過敏、色調変化、振戦(手や足のふるえ)などの運動障害、および皮膚や骨の栄養障害をきたす病態です。

 RSDの発症の仕組みはいくつか提唱されていますが、解明されていません。治療効果にむらがあることから、発症の仕組みは単一ではないと考えられています。末梢(まっしょう)神経や軟部組織の損傷後の特徴的な痛みと、皮膚・骨軟部組織の変化があり、しばしば病態に自律神経(交感神経)が関与します。

 焼けつくような、ジリジリとした痛みが典型的で、患者は障害部位に触れられることを極端に嫌がります。痛みの範囲が、障害神経の支配領域または組織の範囲をしばしば超えて、相談者のように上肢(肩から指先まで)または下肢全体に広がることがあります。

 治療には<1>神経ブロック<2>光線療法<3>薬物療法<4>リハビリテーションなどがあります。

 <1>神経ブロックは、ご質問のペインクリニックで行われます。いくつかの方法がありますが、RSDでは、交感神経が痛みの発生に関与していることがあり、交感神経節ブロックをよく用います。

 これは痛む部位を支配する交感神経節を遮断することにより、血流改善を目的として痛みの悪循環を断ち切るものです。そのほか、硬膜外ブロックや全脊椎(せきつい)麻酔といった神経ブロックもあります。

 <2>薬物療法は、のみ薬の服用と、痛む部位への局所麻酔薬の塗布があります。有効とされるのみ薬は、ステロイドまたは非ステロイド性抗炎症薬、抗うつ薬、抗けいれん薬、抗不整脈薬、抗不安薬などがあります。

 <3>光線療法は、低出力レーザーの抗炎症作用や血流改善作用などを用いるものです。副作用がほとんどないため、全身状態が悪い場合や合併症のために神経ブロックができない患者にも用いられます。このほかにも、自宅でできる小型の電気刺激装置などもあります。

 さまざまな治療方法がありますが、系統的治療法は確立されておりません。相談者のように治療が困難な場合も多いのが現状ですが、なるべく早期に適切な治療を行う必要性が強調されています。

 相談者の場合、神経ブロックをまだ行っていないようですから、ぜひペインクリニックを受診されることをお勧めします。また、のみ薬も何種類かありますから、試されていない種類の薬が効く可能性があります。

 RSDは、その病因が患者によって異なっているため、各人に応じた検査を行う必要があります。われわれ神経内科では、局所麻酔して皮膚の一部を切り取る皮膚生検によって、末梢神経の様子を観察する場合があります。それから推測される原因によって治療法を決定し、早期に施すことが大切ですから、RSDを疑わせる所見がありましたら、麻酔科、整形外科、神経内科の専門医を早めに受診していただきたいと思います。

徳島新聞2004年5月23日号より転載

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