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【質問】 毎回、激しい生理痛に悩む

 38歳の女性です。27歳のころから毎回激しい生理痛に襲われるようになりました。病院では子宮内膜症といわれ、大きなショックを受けました。総合病院で生理を止める点鼻薬による治療を受けました。その間、更年期障害かと思われるような、頭痛や憂うつな状態になりましたが、治療のおかけで2児を出産することができました。11年が過ぎた今、再び同じような生理痛に悩まされています。今後どのようにすればいいでしょうか。子宮内膜症からほかの病気になることはないでしょうか。教えてください。



【答え】 子宮内膜症 -症状が進んでいたら手術を-

沖の洲病院 婦人科 高橋 久壽(徳島市城東町1丁目)

 相談者は、子宮内膜症についてかなりの知識をお持ちのようですが、初歩的な知識を必要としている読者にも理解できるよう簡単に解説し、後で質問に回答しましょう。


【子宮内膜症とは】

 子宮内膜(子宮の内面を覆っている粘膜で、女性ホルモンにより増殖し、月経とともに脱落を繰り返す組織)とよく似た組織が、子宮内膜以外の場所で、内膜組織と同じように増殖と出血を繰り返します。そして小さな血液の塊(凝血塊)をつくり、周囲との癒着を生じて、さまざまな障害を起こす疾患です。

【診断法】

 問診により、月経痛、性交痛、月経過多や不妊(子宮内膜症は不妊症患者の約50%にみられる)などの症状と、内診によりある程度の診断はつきますが、確定診断ではありません。

 図の<1><3><5>のような進んだ病変は、超音波検査やMRIで診断できますが、初期病変の診断は、どうしても腹腔鏡(ふっくうきょう)検査によらなければなりません。

【治療の方法】

 (1)鎮痛剤の使用による対症療法で経過観察(2)排卵抑制。この治療は最もよく使われていますが、副作用が強いことや高価なことに加え、この治療を中止すると、数カ月を過ぎるころより再発を繰り返すなどの欠点があります。またピルも効果があり古くから使われていますが、保険の適用がないので使用が制限されています(3)病巣の除去のみの保存手術か子宮と卵巣部分摘出による根治手術。最近では内視鏡手術がよく行われています。

 さて、質問のお答えですが、最も重要なことは、現在どの程度まで症状が進んでいるかを正確に診断してもらうことです。それによって治療法が決まると思います。相談者は薬の強い副作用を体験されているようですが、薬を選択するとなると、閉経までの約10年間、副作用に耐え、薬の使用と休薬を繰り返すことになります。

 すでに子どもに恵まれていますので、もし図の<1><3><5>のような病巣があれば、前で述べた手術療法を選択すべきでしょう。具体的には<1>については、内視鏡手術による卵巣のう腫のみを摘出、また<3>と<5>は、子宮全摘出術がよいと思います。

 選択を迷うときには、複数の医師と十分な意見交換(セカンドオピニオン)をされることをお勧めします。

 子宮内膜症からほかの病気になる可能性ですが、チョコレートのう腫から1%以下の頻度で卵巣がんが発生します。また、直腸へ浸入した病巣からは、がんの発生がある報告もありますので、定期的な検診が必要です。

徳島新聞2004年5月16日号より転載

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