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【質問】 背中が痛くて眠れない

 52歳の男性です。十数年前に胆石ができて、胆のうを切除しました。背中に鈍痛があり、辛抱できなくなって病院へ行って分かりました。最近になってまた時々、同じように背中が痛くなり、夜、寝られないこともあります。また内臓が悪くなっていて、痛み出しているのではないかと心配しています。昨年は行っていませんが、定期的に人間ドック(半日コース)に入っています。「これといって悪いところがない」と言われています。



【答え】 胆管結石症 -再度的確な診断・治療を-

徳島市民病院 外科 三宅 秀則

 質問の内容だけで診断を確定するのは非常に難しいですが、まず胆石症について説明します。

 胆石症は、文字通り胆道内に結石を生じる疾患です。胆道内といっても、胆のう内にできる胆のう結石と、胆管内にできる胆管結石があります。さらに、胆管でも肝臓内の胆管にできる肝内結石と、肝臓外の胆管内にできる総胆管結石があります(図)。ですから、胆のうを摘出したからといって、絶対に胆石ができないとは限りません。

 胆のう結石は、コレステロール結石という白っぽい石であることが多く、胆管結石は、ビリルビン結石という黒っぽいものが多く見られます。相談者の胆のうは摘出して既にないわけですから、胆管結石について主に説明します。

 胆管結石は、胆汁の流れ道である細い胆管に石ができる病気です。小さい石でも肝臓でつくられた胆汁の流れを悪くしたり、完全に流れを止めてしまったりします。そのため、胆汁がたまり、細菌が繁殖して胆管炎を生じたり、肝臓に障害を生じたりすることがあります。

 また、胆管が蠕動(ぜんどう)運動によって、結石を十二指腸に排せつしようとして、激しい痛みを生じます。典型的な症状としては、上腹部から右わき腹にかけて、突然、激痛が襲う疝痛(せんつう)発作を生じ、その痛みは背中に広がることもあり、数分から数十分間隔で間欠的に生じます。

 胆管結石の発生原因としては、胆のう結石が胆のう管を通って胆管に落ち込んで生じる(落下結石)ことが多いのですが、相談者の胆のうは十数年前に摘出されており、落下結石でなく胆管に結石ができた可能性があります。

 しかし、本来、胆管は胆汁がたまる場所でなく、胆汁がスムーズに流れ、胆のうに比べて結石はできにくい場所ですから、結石がある場合、その原因として、胆管や肝臓に異常がないかを調べてみる必要があると思われます。

 肝内外の胆管に、狭窄(きょうさく)(細くなること)や、胆汁が十二指腸に流れだす乳頭部に病変があり、胆汁の流れが悪くなり、二次的に胆管内に結石ができる場合があります。時にはその病変が腫瘍(しゅよう)性のものであることもあります。

 検査方法としては、腹部超音波検査や腹部CT検査がありますが、胆のう結石に比べて診断率が低く、胆管を詳しく調べる必要があります。最近はMRI検査で、痛みを伴わずに横になって検査を受けるだけで、胆管だけをきれいに描出できるようになってきました。この方法ですと、結石の有無だけでなく、胆管の性状(狭窄の有無)もある程度、診断が可能です。

 胆のう結石に比べて症状が出る頻度が高く、重篤になる場合が多いので、適切な治療は必要です。

 方法としては、内視鏡や、外科手術による摘出があります。結石形成の原因として、胆管に異常があるときは、その治療も必要になってくる場合があります。胆のう結石に比べ、診断が困難である場合が多く、治療方法も選択肢が多いうえ、結石除去だけでは不十分である場合があり、できれば専門医で受診し、的確な診断・治療を受けることが第一と思われます。

 また、胆石症以外の疾患、例えば膵臓(すいぞう)疾患(膵炎、膵石)、尿管結石、胃・十二指腸潰瘍(かいよう)、さらには、狭心症発作でも背中に痛みを生じることがありますので、同様の症状が持続する場合は、たとえ胆管系に異常がなくても、一度詳しく精査を受ける必要があるでしょう。

徳島新聞2004年5月9日号より転載

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