徳島県医師会 トップページへ

  • 文字サイズ標準
  • 文字サイズ拡大
文字サイズ変更について
県民の皆さまへ

【質問】 夜眠れず唾液も多い

 87歳の女性です。3~4年前から不眠症になり、睡眠薬をのみ続けていました。その副作用か、口の中に唾液(だえき)があふれ、1日に何回となく唾液を吐き続けています。どうしても飲み込むことができないのです。唾液を吐いてばかりいるので、体内の水分が減少している感じがします。なぜ、このように唾液の分泌が激しいのか、また、どのような対処をすればいいのか、教えてください。舌の表面は乾燥した感じがします。私は足が悪く歩行が困難なので、通院ができず悩んでいます。



【答え】 不眠症 -生活習慣整え、水分を補給-

鳴門シーガル病院 今井 幸三(鳴門市瀬戸町堂浦)

 <1>不眠症とその対処法<2>睡眠剤の用い方<3>睡眠剤の副作用<4>唾液分泌過多(あるいは嚥下(えんげ)不十分)<5>どう対処したらよいか-の順で説明します。

【不眠症とその対処法】

 最近の研究では、人の睡眠時間は7時間くらいが最もいいと分かりました。8時間の睡眠をとる人は、むしろ寿命がやや短くなる傾向にあります。不眠で病院に来る人の多くは、不眠恐怖症の傾向にあります。それは「今日も眠れないのではないか」と不安が募り「眠れないと体が悪くなるのではないか」と繰り返し考える状態です。なお、高齢の方の睡眠時間は、6時間くらいで十分と考えてください。

 私たちは体の中に、1日が25時間の時計(体内時計)を持っています。太陽に当たり、それを毎日1時間ずつ補正しています。従って、毎朝7時前後の決まった時間に起きて、すぐカーテンを開け、日の光を体に浴びる。活動も始める。それが不眠を治す生活です。不眠症の人には「昨夜は眠れなかったので、今日は遅くまで寝ていないと体がもたない」と思っている方が多いようです。そんな朝も、いつもの時間に起きてください。

 次に、お茶やコーヒーなどは、興奮剤の一種であるカフェインが入っていますので、不眠に悩んでいる人は夕方以降には飲まないようにしてください。

【睡眠剤の用い方】

 生活習慣を整えただけでは、不眠が解消されない人がいます。不眠症(睡眠障害)は、寝付きが悪い入眠障害、眠っている途中で目が覚める中途覚醒(かくせい)、朝早く目が覚めてしまう早朝覚醒、ほとんど眠れない全不眠などがあります。

 医師は患者さんの眠りの状態に合わせた睡眠剤を処方します。例えば、入眠障害の方には、服用後すぐ効く(超)短時間作用型の薬、早朝覚醒の方には、長い時間効く長時間型の薬などです。ただし、高齢の方は、薬剤が体から排せつされる時間が遅くなるため、長時間型の薬剤には、注意が必要です。

 睡眠剤の服用に際しては、医師の指示を守り、自分で勝手に増量しないことが大切です。また、アルコールとの併用は、効果が増強されるため、控えてください。

【睡眠剤の副作用】

 一般的な副作用は、ふらつき、めまい、頭痛、健忘(薬が効いているときの自分の言動を忘れている)、筋力低下などです。ご質問の唾液分泌の増加は、起こりにくいとされています。

【唾液分泌過多、あるいは嚥下不十分について】

 睡眠剤を服用すると、通常、唾液分泌は少なくなります。唾液は1日に1.5リットル近く分泌されますが、加齢とともに減少します。口に過剰にたまる唾液は、分泌の過剰ではなく、おそらく飲み込んでいないせいだと思われます。口にたまった唾液が気になって、少し神経質にもなっているのでしょう。唾液すべてを吐いているわけではないので、脱水(体から水分が抜けること)の心配はしなくていいと思いますが、のどの渇きを覚えたときは水分を取ってください。

【対処法】

 主治医に相談することが一番です。足が少し不自由なようですが、ヘルパーさんに受診の付き添いを頼んではいかがでしょうか。あなたの状態を一番良く知っている主治医から、良いアドバイスが得られると思います。

徳島新聞2004年1月18日号より転載

© TOKUSHIMA MEDICAL ASSOCIATION.