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【質問】 10歳児が目まいや頭痛

 10歳の女児のことで相談します。6カ月くらい前から、目まい、立ちくらみがあり、腹痛、頭痛も訴え、乗り物酔いが強くなりました。朝は起きにくく、食欲もあまりないのですが、学校はほとんど休んでいません。定期健診や尿検査でも異常はありませんでした。放っておいても心配ないでしょうか。だんだんと悪くならないか不安です。適切な治療法、日常生活で気を付けることがあれば教えてください。



【答え】 子どものストレス -人間関係に起因、よく話を-

徳島大学医学部 保健学科教授 二宮 恒夫

 一般に、目まい、立ちくらみ、頭痛、腹痛などの症状があれば、身体の病気が疑われます。診断のための適切な問診と検査が必要です。

 定期健診で異常がなかったとのこと。これが精密検査であれば、身体の病気はないと判断できますが、症状が持続しているなら、まず信頼のおける医療機関での受診を勧めます。

 身体の病気の可能性が少ない場合は、心理的ストレスが原因になって、身体症状を表す心身症が考えられます。

 日常生活で気を付けなければならないことは、どのようなことがストレスになっているかを考え、その軽減を図ることです。そうすれば身体症状も消失します。

 子どものストレスは、子どもの性格特性と、対人関係における障害、学業の負担が、複雑に絡んで高まります。性格特性は、上の子どもと下の子どもとでは、親が同じことを言っても受け取り方が違っているように、問題への対処方法(ストレス耐性)に影響する因子と考えることができます。

 人の顔色をうかがって自己主張できずに物事を内に秘めるタイプや、規律に厳格で柔軟性のないタイプは、ストレスをためやすい子どもです。また、手がかからず育てやすかった子どもは、親に心配を掛けまいと考え、子ども自身も気づかないままに、ストレスを蓄積させている場合があります。

 子どもが人間関係でストレスを受ける環境は、家庭と学校です。子どもにとって、家庭は緊張感のない安心できる場所であることが大切です。夫婦関係、親子関係、その他の家族間が緊張した関係にないかどうか、あるいは家族の不幸で寂しい思いが強くなっていないかどうか、などを考えてみましょう。単親家庭の場合には、そのようになった理由を子どもが、いまだ納得していないこともストレスとなります。

 学校を休まないからといって、学校生活が楽しいとは限りません。クラス内では友人とグループをつくり、そのグループからはずされないように気を使っています。大人には何でもないようなことでも、言い争いの原因になったり、グループからはずれようものなら、嫌がらせに遭うことも、子どもは知っています。

 そのほか、友人の突然の転校、学業や学習塾、クラブ活動なども、負担になっていないか考えてみましょう。

 帰宅後、心身ともに疲れている様子であれば、学校に行きたくなくなり、朝起きも悪くなります。目覚めの悪さは、日常生活の不規則さも影響しています。

 いずれにしても、ストレスの内容は、子ども自身に聞くことが一番です。しかし、日ごろから、子どもに対して禁止句や命令句が多ければ、本音は話してくれないでしょう。子どもが本音を話せる雰囲気がないなら、親はそれを聴く態度をつくるところから出発しなければなりません。

 心の問題の助言は、やはり専門家への相談を勧めます。専門家が分からない場合は、担任の先生や養護教諭に尋ねるか、電話相談などを利用して教えてもらってください。

徳島新聞2003年8月24日号より転載

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