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【質問】 両足や左半身がしびれる

 57歳の女性ですが、産後から自律神経失調症で、すっきりしない毎日です。3年前から心房細動でワーファリンを服用しています。3カ月前に両足がしびれ、病院へ行きましたが、異常なしでした。2カ月前から頭、首、肩、手足がきつくしびれて、救急で総合病院に入院し、脳梗塞(のうこうそく)の検査をしました。しかし、脳外科、整形外科、内科のCT・MRIすべての検査で異常なしといわれました。その後も左半身のしびれは改善されず、苦悩と不安の日々です。よくなる治療方法はないものでしょうか。



【答え】 感覚障害 -神経内科でも受診を-

伊月病院 神経内科 西田 善彦(徳島市徳島町2丁目)

 相談者は、両足がしびれたり左半身がしびれたりと、しびれる部位が変動しているようです。このような場合、やはりもう少し詳しく話を聞いて調べてみないとよく分かりません。しびれは感覚障害の一種なので、今回は感覚の種類と、その障害について一般的なことを説明します。

 まず手や足などの感覚には、「熱い」「冷たい」などを伝える温度覚や、痛みを伝える痛覚などの表在感覚と、関節がどちらに向いているかを伝える関節位置覚や、体の振動を伝える振動覚といった深部感覚などがあります。

 このうち、冷たさや痛さなどの表在感覚は、皮膚表面のそれぞれの受容体に始まり、手や足を通って脊髄(せきずい)に入り、その中心部をすぐ横切って左右逆の前(腹)側の部分を脳に向かって進み、延髄などの脳幹や視床・内包といった脳の内部を通過して反対側の大脳皮質(感覚野)に到達します。一方、深部感覚は関節や骨膜などにある受容体から脊髄の後ろ側(後柱)をそのまま進み、延髄で左右が交差してから表在感覚と同じく視床・内包を経て反対側の大脳皮質(感覚野)に到達します。

 〈図〉に、これらの感覚のさまざまな障害パターンを示しました。この2種類の感覚は、途中経路が違うために、左延髄外側部障害や左胸髄半側障害などのように、脊髄や延髄などでは障害を起こす部位によって、片方は障害が起きるのに、他方は保たれるといった感覚解離を引き起こすことがあります。また脊髄の中心部分の障害である頚髄(けいずい)灰白質部障害(宙づり型の障害)や、脊髄の最も下方に位置している馬尾(ばび)という部分の障害(サドル型の障害)のように、感覚障害の特有のパターンから病変の局在診断が可能となることもあります。

 さて、相談者の感覚障害を、〈図〉と照らし合わせて考えると、3カ月前に両足がしびれたときは、多発神経炎(ただし、しびれ以外にも症状があれば脊髄横断性障害の部分障害という可能性もある)が、2カ月前の頭部も含めた左半身のしびれについては右大脳半球の障害(脳梗塞など)が、それぞれ考えられます。この多発神経炎と脳梗塞という2つの障害は、全身性エリテマトーデスのような膠原病(こうげんびょう)などでは、一つの病気で両方ともみられることがあります。また多発神経炎は薬か何かの副作用で、脳梗塞は心房細動に伴う脳塞栓でというふうに、複数の病因で発症することもあります。ですから、もう少し詳しく聞いて、診察しないとよく分からないように思います。

 神経内科は、体のいろいろな症状を、脳や神経のどの部分が悪いのか科学的に分析して治療に当たる診療科です。しびれのような感覚障害も、問診と神経学的診察だけで、ある程度は病気の原因が分かることがあります。しびれを感じた際には、脳外科・整形外科・内科以外に、神経内科でも一度受診してください。

徳島新聞2003年8月17日号より転載

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