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【質問】 歩くとのどが痛く息苦しい

 62歳の男性です。2年前から、急な動きをしたり、階段を昇り降りするとき、また普通の速さでも5~10分程度、ウオーキングすると、喉(のど)の奥の辺りが痛くなり、息苦しくて歩けなくなります。以前、耳鼻咽喉(いんこう)科で検査しましたが、異常は見つかりませんでした。何科の病院へ行って、どんな治療を受ければいいでしょうか。



【答え】 狭心症 -冠動脈造影検査を-

徳島県立中央病院 林 郁郎

 初めに、喉の奥の痛みについて説明します。おっしゃるような症状は食べ物やつばを飲み込んだときに現れる嚥下(えんげ)痛を除いて、一般的には皆さんが症状を正確に表現し、医師がそれを正しく理解することは難しく、咽頭部異常感といわれています。

 質問によると症状は普段はなく、急な動き、階段の昇降、5~10分のウオーキングで繰り返し起こっているようで、この人にとっては再現性のある症状と思われます。もう少し詳しく、たとえば胸の前の辺りや左の肩、手に痛みや不快感はないか、症状は起こるとどれくらい続くのか、どのようにしていると症状は治まるのか-などお聞きできるといいのですが、耳鼻科の診察では異常がなかったようですし、咽頭や扁桃(へんとう)の病気による症状ではなく、心臓や呼吸器の病気が疑われます。

 次に息苦しさについて考えてみましょう。息苦しさを来す病気はたくさんあります。具体的には<1>呼吸器疾患(上気道疾患、ぜん息、閉塞(へいそく)性気管支炎、肺気腫、呼吸不全、肺動脈血栓塞栓症、胸膜炎など)<2>循環器疾患(狭心症や心筋梗塞(こうそく)などの冠動脈疾患、心臓弁膜症、心不全、心筋疾患、不整脈、心膜炎など)<3>代謝異常(呼吸性アシドーシス、代謝性アシドーシス)<4>貧血<5>中枢性神経疾患、末梢(まっしょう)性神経疾患、筋肉疾患などによる呼吸運動障害によるもの<6>そのほか横隔膜が持ち上げられることによる呼吸抑制、ガス中毒、心因性によるもの-などです。

 質問の人は息苦しさが安静時には起こらず運動時にのみ起こっていること、しかも症状はそれほど長くは続かないとすると、冠動脈疾患、心臓弁膜症、軽い呼吸不全、貧血などが疑われます。

 二つの症状が同じ原因で起こっているとして、年齢なども考慮すると、もっとも疑われる疾患は狭心症です。狭心症は、心筋の虚血(心筋に酸素が足りない状態で主に、心臓に栄養を送る冠動脈の硬化で起こる)により生じる胸部またはその周辺の不快感で、心筋の機能障害を伴うものの、心筋の壊(え)死(し)のないものと説明されています。狭心症のうちは命を落とすことはほとんどないだろうといわれていますが、実際は重症狭心症の患者さんは重症心不全や不整脈を起こし、急変することがあります。

 また別の見方をすると狭心症は、死亡する危険のある急性心筋梗塞の前兆として現れる症状と考えられます。従って、できるだけ早く正確な診断を受け、病状、病態に合わせた治療が必要かと思われます。

 狭心症の診断のためには、血液検査、胸部レントゲン検査、心臓超音波検査、心臓核医学検査を受けたり、薬による効果などをみて、狭心症の可能性が高い場合は2~3日の入院は必要ですが、冠動脈造影検査を受けることをお勧めします。

 いずれにしても早期に内科か、できれば循環器科を受診されてはいかがでしょう。

徳島新聞2003年6月1日号より転載

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