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【質問】 娘の生理が毎月なく心配

 26歳の娘のことで相談します。小学6年生の初潮以降、生理が毎月ありません。3~6カ月に一度しかなく、量も少ないのです。高校生の時に婦人科で診察を受け、「異常なし」とのことで飲み薬をもらいました。副作用が気になり、その薬がなくなってからは服用していません。生活習慣(環境)が悪かったのが原因ではないかと考えています。というのも、小学校高学年から受験勉強をずっと続け、社会人になってからも男性の中で働いています。ストレスや繊細な性格が原因となっているのでしょうか? 適齢期を迎え、結婚を勧めているのですが、乗り気ではありません。それも、生理の不順のせいかと心配しています。



【答え】 月経不順 -黄体ホルモン補充を-

徳島県立中央病院 産婦人科医長 漆川 敬冶

 約1カ月の間隔で起こる子宮出血を「生理」と呼ぶことが多いようですが、医学的には「月経」というのが正しい用語です。月経の周期としては25~38日が正常範囲とされています。

 月経には卵巣から分泌されるホルモンが重要な働きをしています。月経周期の前半では卵胞ホルモンが分泌され、排卵後の後半では黄体ホルモンが分泌されるようになります。月経ではがれて薄くなった子宮内膜は卵胞ホルモンの刺激を受けて増殖した後、黄体ホルモンの作用によって着床の準備を整えます。妊娠に至らなければ、ホルモンの減少により、子宮内膜がはがれて再び月経となります。

 思春期の女性では排卵周期が未確立であることが多く、月経周期の異常もよくみられます。やせ(ダイエットなど)や肥満などの体重の変動によっても、月経周期が不整となる場合があります。また、質問にもあるようにストレスが原因になることもあります。ほかに薬剤の服用に伴うホルモン異常など、月経不順の原因はさまざまです。

 質問の内容だけでは正確な診断は困難ですが、初潮以来、26歳までずっと月経不順ということであれば、環境の影響よりも多嚢胞性(たのうほうせい)卵巣症候群が考えられます。診断には基礎体温、ホルモン測定(血液検査)、超音波検査などが有用です。

 治療方法ですが、今すぐ妊娠の希望がない人には、子宮体がん(子宮内膜がん)を予防するため黄体ホルモンを定期的に補充し、月経様子宮出血を起こすことが望まれます。月経不順は、性機能の成熟や環境の変化で自然に治ることもありますが、長期に放置すると子宮体がんが発生することがあります。

 子宮体がんは閉経前後から増加しますが、月経不順のある若い人にもみられることがあります。逆に月経が規則正しい人に、子宮体がんがみられることは極めてまれです。

 卵胞ホルモンには子宮内膜増殖作用があり、黄体ホルモンには増殖を抑制する作用があるので、卵胞ホルモンだけが分泌され黄体ホルモンが不足した状態が長期間続くと、子宮内膜は増殖刺激のみを受け、子宮体がんを発生しやすくなると考えられています。

 質問の女性は、黄体ホルモン剤の副作用の心配をされているようです。黄体ホルモンには乳房のはり、下肢のむくみ、体重増加などの作用があります。正常周期であっても月経前にはこのような症状を感じる人もいるので、薬の副作用というよりは黄体ホルモン本来の作用と考えられます。月経様出血を起こすために使用する程度の黄体ホルモン剤は安全性が高く、本来必要なホルモンが不足しているために補うと考えるといいでしょう。

 妊娠するためには、排卵が必要です。排卵誘発法は進歩しており、内服薬や注射などによりほとんどの症例で排卵を起こすことが可能となっているので、結婚後の妊娠についてはあまり心配しなくていいでしょう。

 長期の月経不順がある人は産婦人科で正確な診断を受け、必要な治療を受けるようにしてください。その際、基礎体温表を持参していただければ大変参考になります。

徳島新聞2002年11月24日号より転載

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