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【質問】 膝の痛み人工軟骨で軽減?

 77歳の男性です。5~6年前から、膝(ひざ)の痛みを感じるようになりました。当初は大したことはなかったのですが、年を取るごとにひどくなり、歩くのにも苦痛を感じるようになりました。現在、かかっている整形外科医の説明では、関節の軟骨が減っていて、骨と骨が接触し、痛みが出るそうです。電気治療や温湿布などの治療をしていますが、あまり効果はありません。別の整形外科医に診察してもらったとき、人工軟骨を入れて手術する方法があると聞きました。どんな手術で、どのくらいの成功率なのでしょうか。教えてください。



【答え】 変形性膝関節症 -技術・合併症問題なし-

徳島市民病院 整形外科 島川 建明

 中高年の人の膝関節の病気で比較的多く見られるものには変形性膝関節症、特発性骨壊死(えし)、偽性痛風、慢性関節リウマチなどがあります。質問の男性は年齢、ゆっくりと症状が進行していること、関節の軟骨が減っているといわれていることなどから、変形性膝関節症と推測されます。

 変形性膝関節症の手術的治療は<1>関節鏡手術=関節の中をカメラでのぞきながら壊れた軟骨のかけらなどを取り除き、きれいにする方法<2>けい骨高位骨切り術=骨を削ってO脚の膝を真っすぐにして体重を支えやすくする方法<3>人工関節置換術=傷んだ関節の表面を削って人工物に替える方法-などが主に行われています。

 ごく一部の国では骨や軟骨の臓器移植が行われていますが、人工の軟骨だけの入れ替えは、私の知る限りにおいては、まだ実施されていません。したがって、質問の男性の言っている手術は人工関節置換術と思われますので、この手術について述べます。

 人工膝関節手術には、いくつかの異なった方法があります。現在、最も一般的で成績が安定している方法は、関節の表面だけを金属性の人工の骨に替え、間に超高分子ポリエチレン性の人工の軟骨を入れる方法です。

 このタイプの人工関節の機能は、ゲートボール程度のスポーツが可能で、歩行には全く問題はありません。しかし、膝の曲がりは平均120度ぐらいで、正座は困難になります。寿命は、手術後10年間で膝の機能を保っている確率は97%以上と非常に安定しています。言い換えると、この手術を受けた100人のうち、人工関節の入れ替えをする確率は、10年間で3人以下ということになります。

 手術には正確な骨の切除や人工骨の正しい固定、関節の良好なバランスなどを要しますが、手術器具の改良や手術方法の進歩によって、整形外科の専門医に受ければ技術的には全く問題はないと思われます。

 起きてほしくない手術の合併症では、手術部の感染(化膿(かのう))、致命的になり得る肺血栓症、輸血によって病気がうつることなどがあります。感染の頻度は0.3%程度、肺血栓症による死亡率は0.2%程度とされています。

 このような合併症の予防策は、それぞれの病院で工夫されていますが、ここでは徳島市民病院で実際に行っている対策について述べます。感染予防には<1>クリーンルーム(細菌の少ない手術室)で手術する<2>手術スタッフは自分たちの息が手術部にかからないように呼気排出スーツを着る<3>病室を消毒し、清潔に保つ<4>各室の出入りの際には、消毒液で手洗いをする<5>抗生剤を適正に投与する-などを行っています。

 輸血で病気がうつらないように<1>自己血貯血(あらかじめ患者さんの血を貯蔵しておき、手術のときに使用する)<2>回収血(手術中や手術後に出た患者さん自身の血を集め、きれいにした後に輸血する)-などを行っています。

 肺血栓の予防には<1>血を固まりにくくする薬の投与<2>特別な器械、例えばA-Vインパルス(空気の圧で足底を刺激し、静脈の血流をよくする)やCPM(下肢の関節を動かせることによって血の流れをよくする機器)-などを行っています。

 これらによって手術の安全性が向上し、安心して手術を受けられるようになっています。より詳しいことは、最寄の整形外科専門医に尋ねることを勧めます。

徳島新聞2002年11月17日号より転載

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