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【質問】 腰痛に悩む高一の息子

 高校1年生の息子のことでお聞きします。中学2年の3学期、野球の部活の後、突然腰が痛くなり、腰椎(つい)分離すべり症と診断されました。成長期のため手術できず、半年ほどコルセットを付け経過をみました。幸い痛みは消え、高校でも野球部に入りましたが、最近やはり腰が痛むのか、内証でシップなどを張って練習しているようです。再度受診しましたが、私の分かる範囲では、腰椎の最後の骨(5番目)が生まれつき少し左右非対称で、そのためか背骨が上方で少し曲がっているとのこと。さらにすべり症は5分の1と説明され、筋力アップ(特に腹筋)のために運動は続けるよう指示を受けました。このまま野球を続けても大丈夫でしょうか。この状態から脱却する方法はないのでしょうか。



【答え】 腰椎分離すべり症 -負担減らす工夫を-

谷医院 院長 谷 義彦(小松島市立江町江の上)

 腰部脊(せき)椎は、〈図〉のように前方は椎体と椎間板で構成され、後方は上下の関節からなっています。日本人の5~7%が腰椎分離症といわれ、多くは腰椎下部にみられます。

 原因は先天性、後天性、外傷性などいろいろ考えられますが、息子さんの場合、激しい野球の練習などで繰り返される腰への負担が原因で、疲労骨折を起こしたものと考えられます。初期にはコルセットなどにより骨が付くこともありますが、多くは息子さんのように骨が付かず、分離部がレントゲンではっきりと確認されます。この状態を分離症と呼びます。

 分離部は常に可動性があるわけではありません。硬い組織によって結合され、可動性がない場合もあります。分離部が動くと、〈図〉のように弾性のある椎間板に負担がかかり、前方へすべるようになります。これが腰椎分離すべり症です。


 腰椎の5番目が左右非対称とありますが、よくあることで問題はありません。背骨が上の方で少し曲がっているのは、腰痛によるものと思います。これは疼痛性側弯(とうつうせいそくわん)といいます。

 息子さんの腰痛ですが、疼痛があっても1週間程度のわずかな腰部の安静で軽快するなら、運動を続けても問題ないでしょう。激しい練習をする場合は、腰部の負担を減らす工夫が必要です。腹筋や背筋の筋力アップは大事でしょう。

 最近は高校野球でも、けがを防ぐためにストレッチやリズム体操、ウエートトレーニングを取り入れるチームが多くなっています。腰痛がある場合は、脊柱や骨盤、さらに骨盤周囲筋の短縮を防止するストレッチを増やしてください。

 具体的には、体や下肢の関節可動域の拡大と筋力強化が必要です。ただ、痛みを伴う場合は避けてください。腰痛があっても自転車をこぐ運動なら痛みが出ない場合が多いようです。室内ならエルゴメーターで下肢筋力訓練をしてみてはいかがでしょう。腰部の血行もよくなり腰痛の改善に最適です。散歩や水泳もよいでしょう。

 分離すべり症は、椎間板ヘルニアのように坐骨(ざこつ)神経痛や麻痺(まひ)(下肢の筋力低下や知覚障害)を起こすことはまれです。ですから、よほど神経症状がひどく出るか、すべり症が進まない限り手術は行いません。

 すべり症が以前より進んでいないか、坐骨神経症状や麻痺が出ていないかを整形外科の専門医にチェックしてもらいながら、野球を続けられたらいかがでしょうか。

徳島新聞2001年12月9日号より転載

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