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【質問】 長時間歩くとかかとが痛む

 60代前半の主婦です。買い物で5時間ほど歩いたら次の日から右足のかかとが痛くなりました。これまでも時々痛くなることがありましたが、2~3日でよくなっていました。今回は2カ月たっても治まりません。歩かなければ痛くないし、日常生活には困らないので病院には行っていません。ふろ上がりに湿布をしています。右足が左足より少し赤い色をしているように思います。病院に行くべきか、また何科を受診すればよいか教えてください。



【答え】 疼痛性踵骨症候群 -安静保ち鎮痛剤投与-

阿部整形外科 理事長 阿部 光仁(麻植郡鴨島町上下島)
 人は類人猿から進化し、二足直立歩行するようになりました。それに伴って足も体重の保持や直立歩行に適した特有の形になりました。全体が細長くなり、後足部の骨が発達しました。それに伴い筋や腱(けん)も変化しました。

 かかと周辺の構造を説明しますと、踵骨が足の最後尾に位置し、関節を経てその上の距骨を支えています。距骨と踵骨の前方には、内側(親指側)に舟状骨(しゅうじょうこつ)、外側(小指側)に立方骨があります。それぞれの骨をたくさんの靭帯(じんたい)が支えています。

 筋腱では、靭帯で最大のアキレス腱が踵骨の後方突起に付着し、足の裏、踵骨底面では足底腱膜や足底部筋が付いています。

 歩行の際、足にかかる荷重はかかとから始まり、足の外側を経て中足骨頭へ移り、母趾(ぼし)で終わります。足の裏は特有のアーチ構造を縦と横方向に持ち、バネとしての働きと、体重移動を円滑にする役割を果たしています。

 アーチ構造は筋肉の発達により維持されますが、体重増加や老年になっての筋、靭帯の弱体化によって扁平(へんぺい)化します。その際、足の内側、後脛骨(けいこつ)筋腱に沿う痛みや腫(は)れを認める場合もあります。

 足底内側では、足底腱膜炎や踵骨棘(しょうこつきょく)といわれる疾患があります。足底腱膜は足底を保護し、足アーチを保つのに重要な役割を果たしています。中高年者では長時間の歩行や立ち仕事が原因となって発症します。

 かかとの後方では、アキレス腱周囲炎やアキレス腱滑液包炎(かつえきほうえん)があります。アキレス腱や腱の付着部、皮下および踵骨後部滑液包に炎症を起こし、腫れ、発赤、痛みをきたします。皮下滑液包炎では、外側に腫瘤(しゅりゅう)を認め、足と靴の間で刺激されて炎症を起こします。

 かかとの外側では足根洞(そっこんどう)症候群があります。足のねんざを契機に、距骨と踵骨の間の足根洞に炎症を起こし、長い立位、歩行により痛みが増し、後足部の不安定感を訴えます。

 そのほか距踵関節の変形性関節症、腱などへの石灰沈着症、踵骨の疲労骨折、骨腫瘍(しゅよう)、感染症など多くの疾患が考えられます。以上のようにかかと周辺に起きる痛みを伴う疾患を総称して疼痛性踵骨症候群と呼んでいます。

 診断は主としてレントゲン検査で、症例に応じてCT、MRIなども必要になります。治療は安静を保ったり足にかかる荷重を減らしたりするほか、鎮痛消炎剤の投与を行います。症状が強い場合はステロイドと局所麻酔剤の注射も有効です。足底板や適切な靴を処方することもあります。

 あなたの場合も、質問の内容から疼痛性踵骨症候群が考えられますので、整形外科での受診をお勧めします。

徳島新聞2001年9月16日号より転載

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