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【質問】 左手親指の間節と付け根が痛む

 腱鞘炎で悩んでいます。在職中から痛かったのですが、退職しても治りません。痛い日は、はしも持てず、リンゴの皮をむくのも苦痛です。痛むのは、左手親指の第1関節と付け根です。リウマチではないそうです。医者によると、手術しても治らないそうで、しばらく軟こうを塗っていました。よく効く薬ですが、塗っているとかゆくなり、そのうち皮膚がむけるようになりました。怖くて塗るのをやめ、再び痛みと闘っています。同僚には、手術で治った人も治らなかった人もいます。どうすればいいでしょうか。



【答え】 腱鞘炎(けんしょうえん) -手を使いすぎないように-

吉田整形外科 院長 吉田 成仁(鳴門市大津町木津野)

 質問の内容から、親指の狭窄(きょうさく)性腱鞘炎、一般に「ばね指」といわれているものかと考えます。

 この病気は、手の指をよく使う人、特に中年の女性に多く起こり、親指以外の指にもみられます。最初は、指を動かすと第2関節(親指では第1関節)に痛みを覚えます。この症状は起床時や仕事始めに強いようです。病状が進むと、曲げ伸ばしの際にひっかかり感が出現し、最後には指の第2関節が曲がった状態から伸びなくなったり、逆に最後まで曲げられなくなったりします。

 病気の原因は、名前のように指を動かす腱(けん)(筋肉の両端にあり、骨と筋肉を付着させるひものような組織)と、それを包んでいる腱鞘(刀の鞘(さや)のような組織)がこすれて、腱や腱鞘が腫(は)れあがり、腱の通り道が狭くなって、指を動かす際に痛みをきたす状態です<図1>。

 狭窄部は指の付け根の部分で、この部分の手のひら側に硬いものを感じたり、押さえると痛みが生じたりします。

 治療は手を使いすぎないようにすることが原則となります。時には添え木を当てて一時的に指が動かないようにすることもあります。さらに痛みや炎症を止める薬をのんだり、塗り薬(軟こう)を塗ったり、また、狭窄部に炎症止めの注射をしたりします。

 のみ薬は胃にもたれたり、塗り薬はかゆみや皮膚炎をきたしたりすることがあり、その場合には中止しなければなりません。また、注射も副作用があり、漫然と何回もすべきではありません。

 ほとんどの人は以上のような治療で軽快しますが、それでも治らない場合は手術をします。手術は皮膚を1~2cm切り、腫れあがった腱鞘を切り離し(再発を防ぐために一部を切り取る場合が多い)、腱と腱鞘がこすれあわないようにします<図2>。手術時間は15~20分でそれほど複雑ではなく、再発もまれです。

 また、皮膚をごくわずか(2~4mm)切り、手探りで腱鞘を切り離す方法もありますが、確実性に乏しいのが欠点です。手術をしても治らないと診断されたとありますが、“治らない(再発する)場合がある”といわれたのではないかと思います。一般に使いすぎによる腱鞘炎と診断されて、手術で治らないことはないと考えます。もう一度、医師とよく相談してみてください。

徳島新聞2001年8月26日号より転載

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