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【質問】 黒い筋と先にでこぼこが

 40代前半の主婦です。つめの真ん中にいつのまにか黒い筋が入っているのに気付きました。それに、つめ先が縦にでこぼこになって、やすりで磨いてもそのときだけで、伸びるとまたでこぼこになります。治らないのでしょうか。



【答え】 つめの異常 -変化進まぬうちに受診を-

高橋皮膚科クリニック 院長 高橋 収(麻植郡鴨島町鴨島)

 つめはだれもが簡単に目にし、健康のバロメーターといわれるために、変化があれば気になるものです。つめの異常を見るポイントは形と色の変化です。つめの変化が全身性疾患によるものかどうかが一番気になるところですね。

 全身性疾患に伴うつめの変化は、一般に全部のつめに一様に現れ、爪甲(そうこう)の変化が爪母(そうぼ)または爪床(そうしょう)の病変に基づく場合が多いものです。変化が一つまたは若干のつめに限られ、なおかつ爪甲のみに限られているときは全身性疾患の心配は少ないようです。

 ご質問の「つめの真ん中の黒い筋」が、何歳ごろからなのか、どれくらいのつめが変化しているのか、どの程度の幅の筋なのか、また黒い色の色合いがどのようなものか知りたいところです。

 一般に縦の黒い線となり、爪甲に幅数ミリの線状として1個のつめに1~3本見えるのは、メラニン色素の増加によるものです。他の皮膚に色素沈着がなく、爪甲のみの褐色調の変化なら老人性(20歳代以降はこう呼んでいい)の変化か、ビタミンB12欠乏症です。またある年齢で、ほくろが爪床もしくは爪母に出現し、線状に見えることがありますが、ここで問題になるのがほくろのがんと呼ばれる「悪性黒色腫(しゅ)(メラノーマ)」です。かなり濃い黒色である場合は、危険性の有無をはっきりさせる必要があります。

 しかし、メラノーマを心配して受診されるつめの黒色変化で、一番多いのは出血です。心配なら皮膚科を受診されることをお勧めします。

 次に「つめ先の縦のでこぼこ」ですが、程度の差で爪甲縦溝もしくは爪甲縦裂症と呼ばれる状態と思われます。つめの周囲に湿疹(しっしん)などの変化がなく、爪甲のみの変化なら、やはり老人性のもので、爪甲の水分量が減ったことが原因と考えられています。老人性以外の原因で可能性があるのはマニキュアの常用です。

 つめはマニキュアによって外界と遮断されると水気を失い、またマニキュアを落とすときの除光液の脱水作用でつやをなくし、表面がもろくなります。その結果、爪甲が縦方向に割れやすくなり、でこぼこが現れてきます。

 爪甲だけなら、手の皮膚の手入れと同じように、つめにコールドクリームや、尿素を含む保湿クリームを塗ることでかなり改善されると思います。つめの変化が他の全身的な皮膚疾患が原因で起こっているものなら、それを治療する必要があります。

 ご質問の症状以外にも、つめには多彩な変化が見られます。つめは皮膚の一部です。変化が進まないうちに専門医を受診してください。つめを美しく保つためには正しいつめの手入れと、体全体の健康が大切なことはもちろんですが、薬により健康なつめを取り戻すことができる場合もあります。

徳島新聞2001年6月10日号より転載

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