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【質問】 心臓に筋肉痛のような痛み

 17歳の女子学生です。半年ほど前から心臓に筋肉痛のような痛みがあります。多いときは1日数回、少ないときは3日に1回の割合で痛みます。たまにドキドキすることがあります。心配ないのでしょうか。



【答え】 胸痛 -心身の安静を図って-

和田内科循環器科 院長 和田 泰男(徳島市富田橋5丁目)

 ご質問にお答えする前に、まず胸痛を起こす代表的な疾患とその発症状況についてご説明します。

 胸痛は、心臓をはじめとする臓器の器質的病変を伴うかどうかで、大きく2つに分けられます。前者の代表的な例として心臓の冠動脈の狭窄(きょうさく)や閉塞(へいそく)による狭心症と心筋梗塞(こうそく)があります。

 狭心症は、胸部の圧迫感あるいは胸が絞めつけられるような感覚として始まります。痛みが左肩や左上肢へ放散する場合が多く、背中の痛みを訴えることもあります。この痛みは運動や食事、口論などの精神的興奮により出現することが多く(労作性狭心症)、安静にしていると数分から十数分で治まります。また、夜間や早朝などの安静時のほぼ一定期間に起こる場合(安静時狭心症)もあります。

 心筋梗塞に伴う胸痛は、狭心症より痛みの範囲が広く、胸全体が痛くなり、時にその程度もはるかに重くて激烈で、多くの場合、数時間以上痛みが続きます。

 このほか急性心膜炎による胸痛は、左前胸部が刺すように痛く、横になった姿勢で強くなり、座位で軽減するのが特徴です。僧帽弁(心臓の左心房から左心室への入り口にある弁)の異常を伴った僧帽弁逸脱症候群でも心臓に限定した胸痛が起きます。若い人でもこの胸痛を起こし、動悸(どうき)や不安感を訴えることがあります。

 心臓以外のものとして、解離性大動脈瘤(りゅう)では、突然始まる胸部全体の激しい痛みを訴えます。胸膜炎、急性気管支炎、急性肺炎では焼け付くようなあるいは刺すような痛みを訴えることがあり、深呼吸やせきにより増強します。

 また、胆のう炎や胆石症、胃潰瘍(かいよう)、すい臓炎など、腹部の臓器病変による放散痛としての胸痛もあります。これらの場合は食事との関係が深く、食後あるいは空腹時に痛みが増すのが特徴です。

 次に、器質的病変を伴わないものとして心臓神経症と肋間(ろっかん)神経痛による胸痛があります。心臓神経症の胸痛は若い人でも訴え、心尖(しんせん)部に限った鋭い痛みで体動の有無に関係なく起こります。同時に動悸を伴うことがあり、不安感が強く、神経質な患者さんに多く見られます。

 肋間神経痛は、突発的に肋骨に沿って刺すような痛みが起こり、深呼吸やせきで痛みが増します。このように胸痛を訴える疾患には多くのものがあります。

 ところで、ご質問の内容だけからは確かなことは申し上げられませんが、あなたは心臓に限定して、動悸を伴った反復性の胸痛を訴えておられます。狭心症との鑑別が問題となりますが、お若いことから多分に心理的要因が関係していると思われます。このため心臓神経症あるいは僧帽弁逸脱症候群による胸痛が考えられます。一度専門医を受診され、不整脈や器質的心疾患、特に僧帽弁逸脱症候群の有無について検査を受けてください。

 いずれの場合も予後は良好ですが、背景に精神的不安や緊張状態が関与している場合が多いため、日常生活では趣味、スポーツなどを通じ、心身の安静を図ることをお勧めします。

 薬剤は、精神安定剤や抗不安剤、交感神経β受容体遮断剤などが有効ですので、一度専門医にご相談ください。

徳島新聞2001年4月22日号より転載

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