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【質問】 乳歯なく糸切り歯も削れた

 4歳の子供のことでお尋ねします。歯ぎしりがひどく、月日がたつにつれて音も大きく、回数も多くなってきました。乳歯がほとんどなくなったり、小さくなったりして、糸切り歯も削れています。どうしたらよいでしょうか。



【答え】 歯ぎしり -原因はストレスの可能性-

後藤小児科 院長 後藤 町子(徳島市鮎喰町2丁目)

 歯ぎしりの原因は、十分には分かっていません。かみ合わせが悪いなど口腔(こうくう)内に何らかの異常があり、そこに精神的ストレスが加わって緊張状態が増加しているときに起こるのでは、と考えられています。歯ぎしりの際かみ締める力はとても強く、犬歯の切端や前歯が異常に擦り減ることがあります。

 その結果、かみ合わせがくるい、きちんとかむことができなくなり、あごの形が変わってしまうことさえあります。また、歯ぐきが弱って歯周病にかかりやすくなり、永久歯へ生え替わるころには、永久歯の歯並びにも影響してきます。

 治療法としては、かみ合わせの調整や、ナイトガード(マウスピース)など歯ぎしり防止装置を使用するなどの対症療法と、ストレスを取り除く心理的療法が必要とされています。われわれ小児科医は、小児の歯ぎしりについて時々質問を受けますが、ほとんどのケースは、乳歯が生えてくる時期に限られた一過性のものであり、そのまま放置することが多いように思います。

 ご質問のお子さんのように、ひどい歯ぎしりのため歯が擦り減ってしまうようなケースでは、小児科と小児歯科の両科に関連してきます。ここで一例を紹介しましょう。

 A子ちゃんは現在7歳1カ月になる小学1年生です。弟が生まれ、母親の関心がA子ちゃんだけに注がれなくなった3歳半ごろから、歯ぎしりをするようになりました。さらに、幼稚園の年長組になって、担任の先生が代わったことで悪化しました。小学校に入学して、ピアノや水泳、習字などの習い事を始めたころには、両親が夜間に起こされて困るほど、さらに症状がひどくなりました。

 全歯にわたって、著しく歯が擦り減っており、歯科で、接触している歯のかみ合わせの調整を行いましたが、好転しませんでした。そこで歯ぎしり防止装置を装着したところ、歯ぎしり音は止まったのですが、装置をはずすと、再び症状が出始めました。

 面接の結果、A子ちゃんは行儀がよく、弟の面倒見がよいうえ、親や教師の言い付けをよく守る、いわゆる「良い子」でした。小学1年にしてはしっかりしていて我慢強く、また両親がそのことを当然と思い、手の掛かる弟の世話のためA子ちゃんとの接触が少なかったことも判明しました。

 こうしたことから、歯ぎしりの発症や悪化の症状が、A子ちゃんの性格やA子ちゃんを取り巻く環境が誘因となっていると考えられました。そこでA子ちゃんに対してけんかや反抗を許すこと、子どもらしい表現を自由にできる場を与えること、より一層のスキンシップを確保することなどを、ご両親に説明しました。その結果、症状は短期間で完全に消失し、以後再発はしていません(鈴木伸江歯科医師らの症例による)。

 小児の歯ぎしりの中で、乳歯列の場合は一時的なものが多く、積極的な治療を進めるケースは少ないと思われていますが、ご質問のお子さんの場合は、できるだけ早く、小児歯科を受診されるほうがいいと思います。また、ストレスが関与しているかもしれませんので、小児科医ともご相談ください。

徳島新聞2001年2月25日号より転載

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